ミスターミニット 人に関わるところに一番投資する
2018年04月16日
人に関わるところに一番投資する
靴修理と合鍵作製でお馴染みのミスターミニットは2015年からスマホや時計の修理、クリーニングなどサービス内容を大幅に広げている。現在、ミニット・アジア・パシフィック(東京都台東区)では、日本で311店舗、中国、オーストラリアなど5ヵ国で312店舗を展開し、好調な業績が続く。
社長ミスターミニット(ミニット・アジア・パシフィック) 迫俊亮
靴修理だけでなく〝サービスのコンビニ〟目指す
――スマホの修理など多様なメニューを展開していますね。
実は昔から「他にもこういう物を直せないか」と相談に来られる方が多かったんですね。「スーツケースの車輪が壊れた」「目覚まし時計が動かなくなった」といったものです。
そこで我々に求められているのは、靴の修理と合鍵作製だけではないと気づきました。身の回りで何か困った時に「ミニットに行けば何とかしてくれる」という駆け込み寺みたいな存在になることじゃないかと思ったわけです。
時計の電池交換・修理やスマホの画面割れの修理、傘の修理、クリーニングなど、今は様々な声に対応しています。
――靴修理の売り上げ構成比はどのくらいですか。
今は全体の65%くらい。靴修理の売り上げ自体はむしろ伸びていますが、他のサービスがプラスアルファで上に乗ったことで比率が下がっています。
今後の目標として2020年までに靴修理の比率50%を切ることを考えています。個人店では対応できない複数のサービスを提供することで、〝サービスのコンビニ〟を目指します。
SVやエリアマネ3倍に増やした
――スタッフも覚える技術が増えるし、サービスの多様化は大変だったのでは?
まず、トレーナーの数や店舗のサポート・研修を行なうスーパーバイザーやエリアマネージャーの数を約3倍に増やしました。スタッフが技術を学ぶ機会を作ることが重要と考えたからです。
また新品ではないので、修理の段階でイレギュラーなことも起こりがちです。もしもの場合でも、最終的にはそれを完全にバックアップできる工場機能を約5倍に拡張しました。
現在、トレーナーが40人くらい、工場には100人以上います。我々は物を売ったり生産するビジネスではないので、人に関わるところに一番投資をしています。
日本で少なくとも1000店以上
――国内の約311店舗のうち、全メニューを提供するのは何店舗ですか。
クリーニングまで全部提供するには広さが必要なので10店舗です。クリーニング以外だと、50%くらいの店舗をカバーしています。
――駅構内やデパートはかなり出店していますよね。
そうですね、今後増やしたいのは路面店と商業施設関連です。靴修理をメインにやっていた時は坪効率の観点から路面店は無理でしたが、今は色んなサービスがありますから、大きな立地で採算をとることが可能になりました。既に20店舗以上あります。
お客様がちょっと気付いた時に、また買い物の途中や通勤先などで利用してもらいたい。まだ店舗のない県もありますし、日本で少なくとも1000店舗以上は出せるかなと。2025年くらいまでには実現したいです。
売上の半分は海外 非常に伸びている
――海外での出店はどうですか。
我々はオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、中国でも事業をやっていますが、売り上げの半分は海外です。この5年、非常に伸びています。各国とも既存店が好調。新店の出店も進んでいますが、それも〝サービスのコンビニ化〟によるものです。もちろん国によってサービスの需要は異なるので、状況を見ながら組み替えています。
ミスターミニットは元々ベルギーでスタートしていまして今は別会社ですが、ヨーロッパの約15ヵ国に1000店舗以上あります。定期的にコミュニケーションをとって、有益な情報や手法を共有したり、人材の交流を行なったりしています。
海外の店舗の中には〝サービスのコンビニ化〟がさらに進んでいて、靴修理比率約15%のところも。サービスと人が高次元なので、参考にしています。
すぐ評価する「スクラッチカード」
――店舗が多いなかで、一定の品質を保つために、社員のモチベーションを保つ工夫はありますか。
それぞれの職種、職場で〝年間最優秀社員〟を決めて、海外研修に連れて行ったりしています。去年までは〝靴の聖地〟と言われるイギリスのノーサンプトンに行っていました。今年ですと先月、オーストラリアの子会社で時計のサービスが上手くいっている所があるので、そこに研修に行かせました。
他にもスクラッチカードという取り組みがあります。
――スクラッチカードですか?
店舗を回ると、良い取り組みをしている社員はすごく多いですが、評価される機会が年に数回しかないとテンションが上がらない。それで管理職・エリアマネージャー、トレーナーにカードを渡して「我々のバリューに資するよいアクションをした社員に渡してください」と。一等から五等くらいまであって、外れはなしです。一等は、例えばジョン・ロブ、女性だったらジミー・チュウの靴が当たったり、その場でちょっと嬉しくなる仕掛けです。
うちの会社はモチベーションが命。それがあるから技術も習得できるし、お客様に笑顔でサービスできる。やっぱり叱る文化、減点文化だと誰もモチベーションは上がらないですからね。
ミスターミニットに来れば何でも解決
――これからの成長戦略について教えてください。
やはり身の回りで何か困ったことがあったら、ミスターミニットに来れば何でも解決する、という状態を作りたいです。例えば靴修理に関しても、さらに「スニーカーも修理できますよ」とか...。
お客様が「この靴を直したい」と持ってこられたら10万円の靴でも1000円の靴でも直すんですよ。その靴は子供からもらったプレゼントかもしれないですし、我々としてはお客様の気持ちに最大限職人の腕で応えるというスタンスなので。
今、会社のバリューを設定しているんです。ミニット・スピリットということですけど、我々の会社の40年以上の歴史で培われてきた〝すごい人〟を言語化して、全社員に配りました。本のようなものでまとめているので、今後、一般に公開する予定です。
▲本社内にある修理工房
第437号(2018/04/10発行)7面