《バイヤー道~私の買取接客術~》畑邉 知良店長、生で見た母のビンタきっかけに
2018年09月17日
バイヤー道
~私の買取接客術~
RiZ心斎橋店(大阪府大阪市)
畑邉 知良店長
"探偵"目線でで盗品買取防ぐ
生で見た母のビンタきっかけに
ブランド買取販売店「RiZ」心斎橋店の畑邉知良店長。駆け出しの頃、疑いもせずに買い取ったエルメスのバッグ「ケリー」の正体は、母の目を盗み持ち出した息子の仕業による物だった。取り返しに来店した親子に、畑邉店長は返品。コトは済んだと思いきや、母はその場で息子にビンタを食らわせたのだった。これまで様々なお客と対面してきた同店長から、買取接客時に警戒すべきお客のフレー ズや態度について聞いた。
・「これ、家から出てきた」のフレーズ
・質問に答えず「いくらになるの?」と焦った態度
話を鵜呑みにせず質問を重ねる
畑邉店長が岡山の大元店に赴任し1年目の頃、ある日20代前半の男性がエルメスのケリーを持ち込み来店した。「タンスの奥から出てきて」「母に処分を頼まれて」。
そう淡々と話す男性客に対し、同店長はいつも通りに接客見るからに使用感があり、男性客が話す内容と辻褄が合うことから何の疑いもなく買い取った。2日後、男性客は母親を連れて再び来店。お金欲しさに 、母親の私物を持ち出し売りに出してしまったことが判明し 、その場で母親は息子にビンタをした。
そのエピソードを教訓に同店長が警戒フレーズに挙げるのが、「これ、家から出てきた」というお客の言葉。物の出所が家だとしたら、次に「いつ、どこで購入したか」「(家族の物なら)なぜあなたが持ってきたのか」など続けて投げかけてみる。きっちりとした反応が返ってくるかを確認するわけだ。「買取時はお客様の言葉を鵜呑みにせず、常に探偵になった気持ちで俯瞰します 」(同店長)
焦るお客に要注意
即買取はしない
相手の態度にも警戒は必要。例えば尋ねたことに回答もせず、「で、なんぼになんねん?」と威圧的に態度をとるお客には要注意 。焦っている人には速く現金化したい理由があり、それが仮に盗品絡みだとすると大問題だ。
怪し気な時は買取りに即対応せず、「預かり」を提案。例えば宝石で鑑定書が付いていない場合、「一度ルースの状態にして鑑定センターに送り、返送してもらうのに時間を要する」ことを説明。その他、どうにも本人所有が確信できない場合は、正直に「買取りできない」と伝えてみる。
ある日、80代位の男性客が時計を買いに来店した。カウンター席に腰をかけると、隣で同じく時計を買い求めに居合わせた別のお客に対し、「おめぇは、何買おうとしてんぁ」と絡んでいた。最初は若い女性店員がその80代位の男性客を対応していたが、「これはまずい」と思った畑邉店長は咄嗟にフォロー。「暑い中今日はどうされましたか?」と、世間話を始めた。「1対1の接客が難しい場合は、必ず三角形を作ること 。他の"しゃべり場"を設けることで、状況は大分変わります」(同店長)
第447号(2018/09/10発行)9面