《ヒントを探る》須賀質店、質料"返済時の不安"を払拭
2019年01月22日
東京で質店3店を展開する須賀質店(東京都品川区)。同社は新規客に初月利息1%のキャンペーンを提供するなどユニークな戦略を打ち出している。同社の須賀兼一社長から業界発展のヒントとなり得る見解を聞いた。
質料"返済時の不安"を払拭
再利用者には優遇金利で親しみやすさを
--御社の事業内容を教えてください。
須賀 五反田、渋谷、池袋で質店を3店展開しています。大正9年に祖父が創業。私は3代目です。
--新規客は初月利息1%など独特な戦略を仕掛けていますね。
須賀 はい。渋谷や池袋の店に来るのは質利用自体が初めての人がほとんど。具体的な実績は開示していないが、着々と利用者は増えています。
--集客はどのように。
須賀 集客は基本ウェブから。それを見て「信頼できそう」と来店される方が多い。質を利用するメリットを伝える努力をしています。
--具体的に言うと。
須賀 お金を借りる手段の中で、質は借り手自ら「返済しない」を選べるという、世界的に見ても非常に珍しい仕組み。借りようと思ったときに何にネガティブなイメージを持つか。それは当然「返せなくなったらどうしよう」という不安ですよね。そこを払拭させるアピールができるかにつきる。参考になったのは医療の世界。
体のあらゆるコンプレックスを解決し得る自由診療の領域では、まさに病院側がサービスを積極的にアピールしている。当社の場合、「カムバックキャンペーン」という前向きな名前を用いて、完済後1ヵ月以内に再度来店した際に優遇金利にする取り組みも行っている。お金を借りるという後ろめたさを払拭し、親しみやすさを作ることを狙いました。
--須賀さんは異業界から質店の経営者になられたと伺いましたが。
須賀 大学卒業後は不動産仲介会社に入社し13年程勤めました。38歳の時に父が倒れたのをきっかけに転身。不動産営業をやっていた頃はお客様に様々な物件を見せて説明していたんですね。外からこの業界に入ってきた身としては、質のビジネスモデル自体が世に知られていない、もっと自分たちの仕事を語っていくべきなんじゃないか、そう思いました。2016年12月にヤフー!ニュースで出ていた記事で"4割の人が質屋を知らない"という内容も見ました。
--現状の質業界についてどんな印象を。
須賀 現代のお客様にどれだけマッチしているサービスか?と考えると、まだまだ改革はできる。
--何をどう変えると業界は盛り上がりますか。
須賀 リサイクルやリユースの根底にあるのは「物を大切に」「環境に優しく」というところ。一方質店は、"金貸し"の仕事につきまとう「街金」「闇金」というイメージから、ポジティブな印象がなかなか沸き起こってこない。そこでやはり重要なのは言葉の響き。例えば総合建設業ならゼネコン、不動産業ならディベロッパーというように若い人が親しめる横文字が浸透すれば面白くなる。質店にどんな横文字がしっくりくるか、私は毎日考えています。
第455号(2019/1/10発行)19面