《着物リサイクル春夏秋冬》第221回 消費税引き上げ対策を今から準備
2019年02月07日
▲東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長
1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。
駆け込み需要の取り込みと10%クーポンで
増税を売上伸ばすエンジンに
▲高い可能性で今年5年半ぶりに消費税が上がる
平成31年、明けましておめでとうとございます。この一年が皆様方にとりまして実り多き年になりますよう、心からお祈り申し上げます。今年は新天皇のご即位とともに、新たな元号を迎える慶祝の年になる。
日本中が慶祝ムード一色になることを願っている。先月このコラムで書いたように、お陰様で本年たんす屋は二十歳になる。
弊社では、2月の「たんす屋二十歳の記念祭」イベントから、冠に慶祝をつける様に計画している。この催事の記念商品にも慶祝セットを企画している。できれば2019年は平成31年から新元号元年まで、ずっと慶祝を使っていきたいと思っている。これは、今上天皇が生前退位をご決断された賜物ではないだろうか。そうでなければ、次の天皇のご即位の時期はあらかじめ予測できないし、更に、前の天皇の服喪感が漂うなか、新天皇ご即位の慶祝ムードを高めていく事は極めて難しいと予測される。
問題は増税後の売上減少
そしてもう一つ、2019年に非常に高い可能性で実施されるのが消費税10%への引き上げである。2014年4月1日の5%から現状の8%に引き上げられて以来5年半ぶりの消費税引き上げである。また、これまで2回の引き上げ時期延期を重ねてきたので、今回はほぼ確実に実施されると思われる。この非常に高い確率で予測される近未来の消費税引き上げを、今から準備して対策を講じておくか否かだが、私は当然ながら早く講じておいた方が良いと思っている。
たんす屋での価格表示の原則は「本体価格+消費税」である。このようにしておけば、9月30日と10月1日に何もせず、会計で1万円+消費税=1万800円が、翌日からは1万1000円になるだけで特に手間がかからない。一方、百貨店など一部の商業施設では、内税表示を原則としているところがあるので、これにはあらかじめプライスカードやタグの付け替え準備が必要である。しかしながら 、消費税引き上げの最大の問題は、消費税引き上げ後の売上減少である。
たんす屋では、基本的に消費税引き上げの影響を最小限にとどめる様にするのではなく、売上を上げることができる、という発想から対策を準備していく。弊社の基本は「時代の変化を成長のエンジンにする」であるので、「消費税引き上げ」という変化を「売上を伸ばすテコにする」その為の具体的な施策を今から準備するのである。具体的施策は大きく二つから出来ている。
駆け込み需要をしっかり取り込む
一つ目は、「事前の駆け込み需要の取り込み」である。たんす屋では、7月から3ヵ月間を「消費税引き上げ直前駆け込み需要取り込みキャンペーン期間」と考えている。"消費税が引き上げられる前の今こそ、お買上げのチャンスですよ!"としっかりと告知する。更に、"今お買上げの方には消費税引き上げ後に使えるお得なクーポンを差し上げます!"というキャンペーンを全店で仕掛ける。
特にたんす屋にとって、7月は浴衣の最盛期を迎えるので、買上げ客数も売上も年間で最高の月になる。逆に9月は例年非常に厳しい月である。原因は、夏物はすでに売れない上に、このところ秋なのに真夏日が続き、秋物を購入するマインドが起きないところにある。そこで、今年は思い切って消費税引き上げ直前バーゲンを計画している。
10月から消費税が引き上げられる事は、たんす屋が言わなくても9月になれば必ずメディアが連日報道してくれる。そこで、"この9月中が消費税8%の最期の月です!たんす屋では消費税引き上げ直前バーゲンを開催しています!"としっかりと告知する。そしてお買上げのお客様には、当然ながら10月から使えるお得なクーポンを差し上げる。このようにして消費税引き上げ直前3ヵ月は、駆け込み需要の取り込みに全力を尽くす。
クーポン使用をバンバン促す
二つ目の施策は、10月1日からスタートする。当然ながら消費税引き上げが実施されて8%が10%になるわけであるから、買い控えが起こることが予想される。しかし、たんす屋では事前に3ヵ月間かけて10月1日から使えるお得なクーポンをたっぷりと配っている。このクーポンの使用可能期限は、11月30日を計画している。このクーポンの内容はズバリ消費税引き上げを吹き飛ばす「10%オフ券」である。
11月に中間決算を迎えるたんす屋では例年10月から店頭で「大月から店頭で」を展開するが、今年はそのセール告知の中で、クーポン券の使用をバンバン促す。そして、11月の中間決算までに3ヵ月間かけて大量に配った「10%オフクーポン券」を使い切って頂けるように、11月に東西で開催する「大決算エキサイティングバザール」を盛り上げていく。このようにして7月から11月まで5ヵ月間をかけ、消費税引き上げ前の駆け込み需要取り込みと、引き上げ直後の「10%オフクーポン券」で消費税引き上げを、売上を伸ばすエンジンにしたいと考えているが、いかがだろうか。
第456号(2019/01/25発行)18面