【リユース×テクノロジー】コメ兵 強みの真贋力、AIで進化

検索

【リユース×テクノロジー】コメ兵 強みの真贋力、AIで進化

2019年03月19日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

リユース×テクノロジー

10_1.jpg

▲山内 祐也執行役員

コメ兵 強みの真贋力、AIで進化
型番判定組み合わせ精度向上狙う

中古ブランド品最大手のコメ兵(愛知県名古屋市)がAIを用いたブランド品鑑定を今年春から始める。同社の強みである真贋力を進化させ、グローバル展開などに生かす考え。また型番判定が行えるAIも同時に開発しており、店舗などでの業務効率化も進める。開発責任者の山内祐也執行役員に話を聞いた。

リユーステックが海外展開の武器に

--AIによるブランド品鑑定を行われると のことですが、どういったものですか。

山内 マイクロスコープを使って撮った拡大画像を用いた画像判定AIになります。対象はルイ・ヴィトンの革製品。精度は今97%ですが、店舗への導入時にはもっと精度を上げられると思います。1点当たり5~10秒で判定することができます。


--真贋力に定評のある御社がAIの開発に取組む狙いはどこにあるのでしょう。

山内 AI開発に取り組むことで、働き方が変わったり 、次のリユースの展開、例えばグローバルとか新しい事業とかに広がりが生まれることです。AIって効率化やコストダウンって話になりがちで すが、それだけでは開発しません。


--海外進出というのは分かりやすいかもしれません。現地の人に真贋を教えるのは大変そうですからね。

山内 日本はまだ人の定着率が高いですが、海外は結構すぐに転職してしまいます。教えた人がいなくなると、店舗展開やサービスの質を維持するのが難しくなります。


--確かに育成するには時間もかかるでしょうね。

山内 今はまだリユースは日本が進んでるねって言われていますが、今のやり方のままではすぐにみんな追いつきます。だからこそ、日本がリユーステックにおける分野では1番であり続けないと、いずれ世界に出られなくなるでしょう。

ビジネスインパクト重視した開発

--なるほど。では、働き方が変わるというのは。

山内 査定とか商品化の中で煩わしいことがあります。これをテクノロジーに置き換えることで、別のことに割く時間を増やすことができます。例えば、モデルの特定や真贋、値段を決めたり、これらのほとんどはAIやビッグデータで解決できます。余裕ができたら、接客に時間を割いたり、休みを増やしたりAIではできないクリエイティブなことに時間を割けるようになります。そうなれば、今よりもっと良い店舗になるでしょう。


--しかし、真贋は人力でもさほど時間がかかっていません。インパクトとしては弱いのでは。

山内 春に店舗に導入する際には、真贋のAIだけでなく、型番判定のAIも導入します。これにより写真を撮るだけで型番が自動で入力され手書きやデータを打ち込む必要がなくなります。また型番が分かればプライスも分かります。真贋もできればビジネスで使えるものになってきます。今でもすぐに店舗に導入することは可能なのですが、型番判定を加えることで店舗スタッフを楽にしてあげたい。店舗の業務を楽にするには使いやすいアプリである必要があるため、操作性などの改善も行っています。


--入力の手間もなくなると、実務負担は軽減されそうですね。

山内 開発当初からプロジェクトメンバーには「精度を競うものではない」とずっと言ってきました。ビジネスにインパクトがあるものを作ろうと。


--ただ、AIに依存し過ぎると、鑑定士が育ちにくくなる懸念はありませんか。

山内 そうはならないと思います。査定時にルーペを使ったり、もしくは匂いや手触りとかで判断していたりというのが業界一般的にあると思いますが、それをやめるわけではないですし、学ぶことを止めるわけではないので。あくまで業務を効率化するだけです。むしろ、今まで見抜けなかったのが、画像判定を加えてできるようになります。AIは集合知なので、みんなで教師データを作る。モノを見極める匠が本物か偽物か判断できないとAIも進化しません。


--確かに偽物の精度が上がっている中、真贋力も進化する必要がありますね。

山内 いずれ今のアプローチでは見抜けない偽物が出てくるでしょう。これまでは匠の技がそれを超えてきましたが、それを超える偽物が出てくる可能性もある。AIがないと見抜けない偽物も出てくると思います。

画像以外の真贋アプローチも

--画像判定以外の真贋アプローチも考えられていますか。

山内 1つは型番AIと組み合わせる。画像による素材へのアプローチに加え、型番の情報、つまり年式やモデ
ル名などと紐づけることで精度を上げられると思います。型番による特徴を匠は知っているので、素材だけでは分からない部分にプロダクトの要素を加えることがひとつの方法と考えています。


--その他には。

山内 コメ兵では成分分析も既にやっていて、エルメスの金具やクロムハーツの素材などのデータを蓄積しています。機械が高いので、各店に導入するのは難しいですが。後は匂いとかX線とか色々考えられますが、今挙げたもの以外で、みんなが思い付かないアイデアも持っています。


--う~ん、お客の人相とかですかね?

山内 そういうのもあるかもしれませんね笑。


--最後に今後の展開を聞かせて下さい。

山内 革製品のブランドとしては、エルメス、シャネル、グッチ、プラダ、コーチをカバーしようと。これでハイブランドの大部分はいけます。その後はまだ決まっていません。今のアプローチでは天然のダイヤは難しいですが、スニーカーやアパレル、時計などの工業製品ならいけます。精度を上げたりとか方向性の分岐点はいろいろありますが、まずは店舗への導入をしっかりと進めていきたいですね。

第459号(2019/03/10発行)11面

Page top
閉じる