リユースモバイルジャパン、「完全分離プラン」で中古スマホ拡大へ
2019年05月24日
2019年、中古スマホの流通台数が増加する可能性が高まっている。「その背景には今年中に電気通信事業法が改正されること」と話すのはリユースモバイルジャパンの粟津浜一会長。これにより、諸外国と比べ小さい中古スマホ市場が今年から変わりそうだ。リユースモバイル業界最前線で携わっている粟津会長が、今後の中古スマホについて予測する。
中古の「安さ」認知されず
中古スマホの市場は規模を徐々に大きくしている。中古端末の販売台数は16年度を除き右肩上がり。MM総研の調べによると20年には年間販売数が300万台を突破するとされている。しかし、新品の販売台数と比べると、中古スマホ流通数は微々たるものであり、中古スマホ流通数は、アメリカ、ドイツ、フランスと比べ著しく低い。
粟津会長は「消費者に中古スマホの最大の魅力『安さ』が認知されていないことが要因」と分析している。その原因が、通信料と端末料金を一緒に支払う「セット販売」。
日本の通信キャリア大手のソフトバンク、NTTドコモ、KDDI3社の料金プランは、端末代金を分割払いにし、月々の通信料や通話料を端末代金と一緒に支払う消費者が大多数。端末代金と通信料を合わせて月々請求されるため、端末のみの価格が認知されにくい。
端末を一括で買う場合「新品」と「中古」で比較されるが、日本国内の消費者は新品端末を一括で購入する人が少ないため、「安さ」を訴求できていない。
「ハイテクマーケティングにおける中古携帯スマホのマーケットは現在3%〜4%ほど。この時点の利用者はイノベーター(革新者)と言われている。イノベーターの口コミで次に買うのはアダプター(初期採用者)と呼ばれ10%〜15%ぐらい。現在、格安simは13%ほどなのでアダプターに位置する。この先に高いハードルがあり、ハイテク産業ではこれを超えることが難しい」と話す。また「キャリアで下取りに出す人は30%。キャリアへ機種変更に行き『下取りしますか?』と聞かれ、そのまま預けているケースが多い」と推測している。
海外と通信料に格差
粟津会長は「訴求できていない『安さ』は、今年に電気通信事業法の改正で、盛り込まれる見込みの『完全分離プラン』で解消される」と予測している。昨年8月に北海道で行われた講演会で菅義偉官房長官は「通信キャリアのプランを4割程度見直す必要がある」と発言したことが、料金見直しの契機となった。
その背景にあるのが日本の通信料金が諸外国と比べ高額であること。粟津会長は「諸外国との通信料金の差は3〜4年前まではなかった。海外ではMVNO(他社から無線通信インフラを借りて、通信サービスを提供する事業者)が普及し、それに対応する形で通信キャリアが料金を引き下げた。そのため、海外と日本で通信料金に開きが生じた」と話す。
完全分離プランになった場合、消費者が新品スマホを適正価格で購入する負担は大きい。新品のiPhoneなら、価格は10万円を超える。通信キャリアが新品スマホを定価販売すれば、中古スマホ1番の魅力「安さ」を訴求できる。中古スマホを購入し、その中古スマホを通信キャリアに持ち込み、通信プランを契約するという選択肢が広がると粟津会長は見ている。
NTTドコモは先日、従来の通信料金を値下げしたプランを発表。ソフトバンクとKDDIは分離プランを導入済みだが、NTTドコモの通信料金の値下げを見て、通信料金を下げる見通し。
ただ、粟津会長は「法案が成立しても、完全分離プランをどのように明記するかがカギになる」と懸念している。例えば、通信キャリアが8万円で仕入れたスマホを赤字の5万円で販売し、その割引分を通信料金で賄う、といったことが可能であれば、現在のプランと実質変わらない。
ガイドライン制定で信頼向上
中古スマホ市場の活性化を見据え、リユースモバイルジャパンの有志とMRR(一般社団法人 携帯端末登録修理協議会)でガイドラインを制定した。ガイドラインの制定により、中古端末を扱う事業者の信用や信頼を高める狙い。ガイドラインに盛り込まれる内容は、リユースモバイル機器を買取る際の確認すべき事項、個人情報の取り扱い、品質管理など。同団体は、ガイドラインを遵守している事業者を認定し事業者の安心度を高める施策を検討している。
「公開後もガイドラインの改正を続け、リユースモバイルのユーザーが安心・安全に利用できるガイドラインを目指す」(粟津会長)
第463号(2019/05/10発行)16面