《着物リサイクル春夏秋冬》第225回 令和の時代がやってきた!!
2019年06月07日
中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」。
▲東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長
1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。
元号並ぶ手拭、菊地紋入りバック
令和グッズで浴衣商戦に挑む
5月1日、いよいよ令和の時代がスタートした。202年ぶりの天皇陛下の生前退位を受けて、慶祝ムード一色の新元号のスタートである。新しい元号を全社挙げてお祝いすべく、令和記念商品をオリジナルで作る事にした。
先ずは令和手拭である。新元号の発表を受けてすぐに社内でデザインし、4月30日までに全店に投入できるよう仕入れ先に発注し、間に合わせる事が出来た。
西暦645年の「大化」が初元号
元号は、今では世界で日本だけが使用する固有の文化である。そもそも元号の起源は中国であるが、清朝の終焉とともに消滅した。満州国でも元号が用いられていたが、1945年満州国の終焉を持って使われることはなくなり、現在では日本だけが使っている。
日本の元号は、西暦645年の「大化」が最初と言われているので、元号を使いだして1374年が経ち、その間に232個もの元号が用いられてきた。つまり元号の平均は、なんと6年にも満たない短いものだったのである。
そして、明治に入ってから天皇陛下の在位と元号がリンクするようになった。ちなみに、最短の元号は鎌倉時代の暦仁でわずか74日間、最長の元号は昭和の64年、2番目が明治の45年、3番目が室町時代の応永の35年で、平成が4番目で31年である。
手拭はインバウンドにも対応
さて、新元号「令和」の決定を受けて令和手拭のバックには、菊の地紋を入れるようした。次に令和手拭といっても、令和の文字だけでは面白くない。遡って平成・昭和・大正・明治と並べ、江戸時代の最期の元号である慶応を加えた。そして筆文字でこれら六つの元号を書き、その下に「keio、meiji、taisho、showa、heisei、reiwa」と英字表示を併記した。これは、インバウンド客の増加に対応した施策である。
更にその下に「1865〜1868、1868〜1912、1912〜1926、1926〜1989、1989〜2019、2019〜」と西暦を表記した。そして各々の元号の横に、印鑑をイメージした赤い丸の中にそれぞれの元号をデザイン化したものを添えた。これで完成である。
これらの年号には、私自身の強い思いが込められている。私の曽祖父である中村清次郎は慶応4年生まれで、この年は明治元年である。その息子で弊社の創業者・喜代蔵は明治29年生まれ。二代目の喜久蔵は大正15年生まれでこの年は昭和元年。そして私は昭和29年生まれ。息子修一は平成元年生まれでこの年は昭和64年。更に孫の慶一は平成29年生まれで、祖父と私と孫は29年繋がりだ。さらに娘の麻由子も8月に孫を授かる予定で、令和元年生まれになるがこの年は平成31年だ。六つの元号を並べて我が家の系譜と繋げてみると、曽祖父から孫まで何か不思議な縁を覚える。
新元号の発表を受けて、西暦の両建て使用の是非が問われることもあったように聞き及んでいる。便利か不便かだけで判断した場合は、西暦に一本化した方が便利である。しかし、1300年以上も継続してきた文化を大切にすることの方が、これからの時代は価値がある様に思える。
涼感漂うクールビズ浴衣
5月1日の令和元年初日に合わせて店舗に投入した令和手拭は、900円プラス消費税と手拭とすれば決して安くない価格だが、お客様からの評判は上々のスタートである。合わせて、令和セット、着物と帯で1万円、3万円、5万円をお買上のお客様にも令和手拭をプレゼントする事を企画した。
更に夏に向けて、令和扇子を6月から、令和浴衣を7月から発売を予定している。これらの令和手拭、令和扇子、令和浴衣は、今シーズンの浴衣商戦の目玉の一つにしたいと思っている。昨シーズンの浴衣商戦は全国的に大苦戦で、前年比90%で市場規模は約120億円と言われている。その状況下、たんす屋の浴衣は前年比104.2%と健闘した。今シーズンも産地のメーカーさんから聞く限りでは、仕込みが消極的で好材料が見当たらないという。
弊社とすれば、東京オリンピック、パラリンピックを来年にひかえて、昨年12月にオープンした神田明神内の「j-culture着物屋」を記念して神田明神浴衣や、ドット柄の中を世界の万国旗でデザインした通称「オリンピック浴衣」を作成。これらも含め、全てのオリジナル浴衣をクールビズ素材で作り"涼感"を前面に押し出しアピールしていく戦略である。
来年の7月24日に東京オリンピック開会式を迎える。盛夏のオリンピックには、浴衣が欠かせないアイテムになると思っている。その前年、新たな元号令和が幕を開け、新元号を言祝ぐ令和手拭、令和扇子、令和浴衣で慶祝ムードを大いに盛り上げて来年の東京オリンピック、パラリンピックにつなげていきたいと考えているがいかがだろうか。
第464号(2019/05/25発行)18面