リユースで活躍するシニア 若手人材難に光?
2019年08月24日
リユースで活躍するシニア
若手人材難に光?
リユース業界でシニア人材の採用が活発化している。まだまだ労働集約型が色濃いこの産業で、人材獲得に悩まされる企業もあるだろう。セカンドライフに、リユースの畑を歩もうとするシニア側の意欲は何にあるのか。また、採用側のメリットや課題はどこにあるかを探ってみた。
前職のスキル活かし厨房機器を再生
査定→買取り→商品再生→販売というリユース業務の一連で、一度に多くの人材を投じるシーンがあるとすれば、商品再生だろう。
厨房機器買取・販売大手のテンポスHD(東京都大田区)は2005年に定年制を撤廃し、現在従業員の2割をも65歳以上で構成(60歳以上では全体の3割)している。同社の再生センターでは、飲食店から引き上げた中古機器の洗浄や検品をしている。前職でメーカーに居た者や家電修理に携わっていた者が、自身の経験を活かそうとテンポスの門戸を叩いてくる。「シニアに限り積極採用をしている訳ではない」(人事総務部・人材事業部 杉本啓鑑部長代理)としながらも、シニア雇用の実績から、ハローワークを経由し定期的に採用を実現している。
同社は、「成果さえあげれば、シニアにも30~40代並みの報酬を与える」(杉本氏)としている。シニアの働く意欲に対して相応の待遇を用意し、また「幾つになっても能力開発」を掲げていることからも、前のめりの姿勢がうかがえる。
「若い人は続かない」
洗浄作業でシニア活躍
テンポスと同様に商品再生でシニアが活躍しているのが、パワーセラー(埼玉県朝霞市)だ。同社は家電等のリユース事業を手掛け、シニアが冷蔵庫や洗濯機等の洗浄を行っている。同社の臺真樹社長は「今や仕事の種類は溢れているし、若い人を雇っても続かない」と話す。約10年前から60歳以上の採用に乗り出し、現在従業員55人のうち9人を60~70代で構成している。
同社では、専門知識を要しない業務をシニアへ振り分けている。個人差はあるが加齢による作業スピードの課題は否めない。そこで、1人に1種類、専用シールを付与し、作業を終えた商品の裏にシールを張り付けてもらうことで、各人の成果を可視化し指導に繋げている。時給は1,000円。「定年退職後も社会との関わりを持ちたいという目的が大きいのでは」(臺氏)
「3K、若手は嫌がる」
整理現場でゴミ仕分け
生前・遺品整理や片付けの分野で、シニアが活躍しているのがマルタカ商事(千葉県君津市)だ。リユース店と買取店事業を主体としてきた同社だが、現在月に10件超の案件を受注するほど、片付け事業が成長中。同社の荒井寿孝社長は、「まだまだ業界の3K(きつい・汚い・危険)イメージは拭えない。若い人が嫌がると思い、まずは経験豊富で真面目なシニアのスキルに着目した」と話す。
シニアは実際の片付け現場で、社員の指導の下、有価物と廃棄物との仕分けをしている。「例えば使いかけの液体。食品や化粧品はだめだが、洗剤系は店舗で数十円にすれば売れる物もあると説明すると、理解してくれる」(荒井氏)
「この若造が!」
人間関係にも配慮
シニア人材はハローワークや自社で募集するほか、「全国シルバー人材センター事業協会」を伝い採用することも可能だ。今回取材した企業にも、同センターを利用した採用例もあった。
一方で、シニア採用はメリットばかりではない。若手に交じり仕事することに耐えられなかったり、「この若造が!」と嫌悪感を出したりと人間関係トラブルのリスクもゼロではない。さらに、真面目な性格ゆえに、夏には熱中症対策にも若手以上の気配りが必要だ。各人の状態に応じて労働環境を作ることが求められる。
第469号(2019/08/10発行)24面