宝石の古物売買、始めるならコレ
2019年10月07日
第61回 宝石の古物売買、始めるならコレ
まずはブランドジュエリーで相場把握
前回は「腕時計」をテーマにおすすめの商材をお話しました。今回は「ジュエリー(宝石)」をテーマに同様のお話をしていきます。ジュエリーと一口にいっても、古物市場では「ブランドジュエリー」と「ノンブランドジュエリー(市場によって一般ジュエリーとか宝石とも呼ぶ)」に大別されます。前者は、カルティエやティファニーといった宝飾ブランドが作るジュエリーを指します。後者はブランド名を冠さない、自由な発想で作られたジュエリーです。ブランドジュエリーと異なりメーカー定価が存在せず、価格帯もデザインも多種多様です。
これからジュエリーの古物売買を始めるのであれば、まずはブランドジュエリーから手をつけることをおすすめします。ブランドジュエリーはメーカー定価があるため、相場が把握しやすいからです。よほどのプレミア商材でなければ、定価に対する掛け率が目安となりますし、型番をWebで調べれば中古の販売価格なども容易に分かります。
一方で、ノンブランドジュエリーはメーカー定価が存在せず、ましてや型番などありません。その時々の市況を踏まえながら、製品そのものの価値(宝石、地金、デザイン性)を総合的に判断して値付けを行うので難易度は高め。まずはブランドジュエリーから取扱い、慣れてきたらノンブランドジュエリーにも目を向けていくのが良いと思います。
ブランドジュエリーなら、腕時計と同じく定番どころを買うのがおすすめ。カルティエの「ラブ」や「トリニティ」、ブルガリの「B-Zero」シリーズあたりは、価格も10万円アンダーからと手が出しやすい。ラブリングやB-Zeroリングは、近年は外国人向けとして人気が上昇。サイズが大きいものほど値段が高くなる傾向です。人気が安定している上に、素材やサイズによって値段が違うため、他ブランドにも通ずる相場感の勉強にもなります。
こうした傾向が分かってくれば、ワンランク上のブランドにチャレンジできるようになります。例えばヴァンクリーフ&アーペルなら、主要モデルの価格帯は10~30万円台と一回り以上高くなりますし、モデルのバリエーションが豊富なため取扱い商材の幅が広がります。
ノンブランドジュエリーなら、初めはダイヤメレ石が中心のファッションリングがおすすめ。市況に左右されにくく、売りやすい点が魅力。しっかりと下見して、その時の相場感をつかめばあまり失敗しないでしょう。
いわゆる「宝石」のイメージが強いルビーやサファイヤ、エメラルドは、元々の相場感の把握はもちろん、市況による値動きを注視しなければなりません。例えば、株価や為替の値動きがよくないときはみんな値段に辛(から)くなるため、ツブシ向きの商材が強くなる傾向です。最近は地金相場が高騰していて、まさにこの傾向が現れています。
まずは半貴石と呼ばれるそれほど高くない商材から手をつけてみて、相場感をつかんできたらルビーなどの貴石にチャレンジしてみましょう。定価がない宝石相場は、それこそ古物市場の実戦で覚えていくほかありません。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ・執行役員 兼 オークション事業本部 本部長 グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
第472号(2019/09/25発行)17面