コメ兵、ブランドオフ買収は実現するのか
2019年10月24日
中古ブランド最大手のコメ兵(愛知県名古屋市)は9月20日、ブランドオフ(以下︰BO・石川県金沢市)との間でスポンサー支援に関する基本合意書を交わしたと発表した。2019年中に実行することを目指すと言う。大黒屋HDとは破談に終わったが、果たして今回はどうなるのか、業界の注目を集めている。そこで、両社のシナジーや協議の行方を考察した。(本紙部長・瀬川淳司)
スポンサー支援に関して、両社はまだ基本合意の段階だが、実現する可能性は高いと見る。支援先候補としては、ファンドを含め複数社の名前が挙がっていたと噂されている。その中から、コメ兵と基本合意に至った経緯を考えると両社にとってメリットが大きかったと見るべきだろう。まずは、両社のシナジーについて考察する。
中古ブランドで圧倒的No.1を確立
表にまとめた通り、売上規模は両社を合わせると655億円となる。これにより、急速に追い上げるSOUの今期の売上の着地見込み(356.5億円)に2倍近くの差をつけることができ、中古ブランドトップの地位を盤石にできる。コメ兵は、国内を盤石にすることで、グローバル展開に舵を切ることも可能となる。そしてその際に役立つのがBOの知見だ。BOはFCを含め既に香港をはじめ、台湾、タイに展開。現在は撤退したが中国でも以前4店舗を展開していた。コメ兵は中国に1号店を出店、タイでの出店準備を進めており、BOが持つ海外展開の知見が役立ちそうだ。
一方、国内事業はどうかというと、両社はオークション(古物市場)を運営しており、一緒になることで、取扱高で突出した存在となる。また、これに参加する会員数は、コメ兵942社に対しBOは約1300社、重複する会員がいるにせよ両社、新規会員の獲得が容易になる。商品等を相手の市場に出品し合うことで、出品量を増やすこともできそうだ。
小売りの面では、両社とも都市部に店舗を展開。これにより、都市部での買取シェアが高まるとともに、販売時には在庫の融通が可能となる。小売りに強いコメ兵と免税小売りに強いBOにとって在庫共有により販売機会を広げることができる。
金融債務問題は既に解決済みか?
BOの財務内容が悪化した要因は、ヤマダ電機とのコラボ店に失敗したことにある。2015年からヤマダ電機の店内にブランド品売り場を設ける試みを行っていた。当時は訪日客による"爆買い"が流行語大賞に選ばれるほどの絶頂期で、BOもこの時に多額の資金調達を行い、商品を大量に仕入れた。しかし、中国との関係悪化により訪日客が激減。多額の不良在庫を損切りしたことで財務内容が悪化した。
今回発表された承継スキームでは、金融債務を引き継がずに別会社に資産や人的資源等を移管し、その別会社をコメ兵が子会社化するというもの。金融機関等の承諾が最も大きな課題となるが、この点においてもまとまる可能性が高いと見る。コメ兵にとって大前提となるこの問題が白紙の状態で、基本合意に至るとは考えにくいためだ。
コメ兵がBOを実質的に買収した場合、安山勉社長が続投するのか?というのも気になるところだが、その可能性が高いと見る。コメ兵がこれから強化していくグローバル展開等において、安山氏の知見や人脈を手放すのは勿体ないというのがその理由だ。
安山勉社長に取材を申し入れたところ、「今回の件については一切お話できません。ご期待ください」との回答だった。普段はリップサービスの多い同氏がこれだけ沈黙を貫くことからも、今回の協議に掛ける実現への本気度を物語っていると言えそうだ。
第473号(2019/10/10発行)24面