古物市、リアルからネットにシフト?
2020年02月09日
SOUが9月にリアル競り廃止
ネット化を段階的に推進
ブランド品を競る古物市場を中心にネット上で開催する方式が増えている。背景には古物市場の乱立による開催日程の問題や効率化等がある。「SOU」は、今年9月にはリアル競りを廃止し、完全ネット化に切り替えると話題を呼んでいる。ただ、リアルをネットに切り替えれば解決と、事は単純ではない。
主なBtoBネットオークション
非合理のようで合理的なリアル市
古物市場大手の「RKグローバルオークション」は昨年末から「オークネット」と連携しネットでの競りを始めた。「ネット上で開催することで新たなバイヤーにリーチできる」と話す。
リアルのブランド系古物市場は、下見から本番までの期間を考えると他の市場と日程が重なることが避けられない状況だ。そのため開催日を増やして対応するのが難しい現状がある。また、荷物の増加により、競り時間が長引くと相場への影響やバイヤーの体力的な負担も大きくなるため、解決策を探っている。もちろん、長時間化は主催者の人件費等の負担増加にもつながるため、出品者、バイヤーや主催者側の利害が一致することでもある。
ネット化すれば、日程や距離に関係なく多くのバイヤーに参加してもらえる。出品量が増えても問題ないと思われがちだが、事は単純ではない。リアルは現物の下見ができるため、バイヤーは踏み込んだ値を指せる。競合バイヤーとの競り合いにより値も上がりやすい。その結果、出品者の満足度も上がり良質な荷が集まるという好循環を呼ぶ。
しかし、ネットでは画像をもとに判断し、競合の顔も見えないため、相場は予定調和で終わりがちとなる。競り上がりに重要なのは人数というよりバイヤーの顔ぶれによるところが大きい。ネット上で買いの弱いバイヤーが集まっても相場は上がらない。そのため、ある市場主催者は「ネットには相場が安定しているものや低単価な商品が集まりがち」と話す。買いやすさや良質な荷を求め、遠方まで足を運ぶバイヤーが多数いるが、一見非合理のようでリアルの理が存在する。
予定調和のネット カギは海外バイヤー
にも関わらず、ネット化を推進しようとしているのが、SOUが運営する「STAR BUYERS AUCTION」だ。同社では今年9月頃を目途に完全にネット化する計画。香港や国内の骨董を除いて、その他はリアルの競りを廃止する。「為替などの影響による相場変動リスクを抑えたい」(岸藍子社長室課長)と言うのがその主な理由だ。
同オークションは、自社荷の出品が大半を占める。同社の在庫回転期間は約60日と短いが、相場変動により、利益への影響は生じる。そのためネット上でより早く売却できる環境を整える。ただ、ネット化により相場が下がった場合、その損害は自社が被ることになる。
カギを握るのは海外バイヤーの開拓だ。高値で入札してくれる海外バイヤーが増えれば、相場が下がることもない。同社では昨年11月から時計とバッグに海外事業者専用の入札サイトをオープン。アジアや欧米の7ヵ国16業者が事前入札を行い、その金額は約10億円にも上ったと言う。同社では海外現地法人の設立を加速。香港、NYに加え、パリ、上海、シンガポールに設立する計画と言う。2021年8月期までに海外の入札事業者を200社まで引き上げる考えだ。リアルからネットへの切り替えが成功するか、注目を集めそうだ。
第480号(2020/1/25発行)20面