店名は「腕」の昔の読み方から名付けられている。「丁寧な生活」をテーマに、確かな技術でモノもからだも大切にする、穏やかな空間が多くの人を惹きつけている。
繁盛店の店づくり vol.208
kainaのオーナーは二人。家具などモノの修復士・吉岡良太さんと、からだの修復士の吉川修司さんだ。二人とも家具製作技能士(吉岡さん)、柔道整復師(吉川さん)の国家資格を持っている。
吉岡良太さん(左)と、吉川修司さん(右)が知り合ったのは、テニスの社会人サークル。吉岡さんが独立すると聞き、趣旨に共感した吉川さんがサロンを開設。実はカフェ&バーで提供する料理は吉川さんが担当。知り合いの料理研究家がレシピを考えている
1階のリビングに並ぶのは吉岡さんが勤務していたデンマーク家具メーカーの家具。新品と中古があり、中古品は吉岡さんが修復して販売する。
リビングはカフェ&バーにもなっており、お客はお茶やお酒などを楽しみながら、じっくり座り心地を確認できる。「少し座っただけでは家具の良さはわかりません。ゆっくり座ってもらえる場所を作りたい思っていました」と吉岡さん。
ゆっくり過ごしてもらうため、ホットコーヒーとホットティーはポットで提供。コーヒー豆は酸味を抑え、冷めても美味しく飲めるようにブレンドしてもらっている
家具の修理は口コミで評判が広がり、現在2ヵ月待ちの状態。鎌倉や逗子、藤沢など近隣のお客がほとんどで、「このエリアのお客様は古い家具を大切に使っている方が多いですね」と吉岡さんは話す。
吉岡さんの工房。吉岡さんは接客で「お話を聞く」lことを大切にしている。「ほとんどのお客様が『この家具、修理する価値がありますか?』と質問されます。私は、愛着のある家具はどんなものでも、直す価値はあると思っています。
話を聞く中で、真新しくしたいのか、古さを残したいのか、そのさじ加減を探っていきます。時には、お客様の服やアクセサリーから、自然素材が好きなのか、どのように修復したいのか、お客様が持っているイメージを汲み取るように努力しています」
トレーニングや施術などを行うケアサロンは2階。お客はまず1階のリビングで飲み物を飲みながらカウンセリングを受け、施術後もリビングでお茶をしながら、治療内容の説明を受ける。「家に帰ってきたような、ほっとできる場所にしたいと思っています」と吉川さん。あまりの居心地の良さに、9割以上がリピーターになると言う。
2階にある「からだのケアサロン kaina」。トレーニング機器やベッドなどがおいてある。窓からは緑が見えて、とても心地良い。吉川さんは「自分のからだがどうなりたいか、お客様に目標を設定してもらってから、やることを決めています。施術も大切ですが、生活習慣で今の困ったからだが出来上がっているので、そこを見直してもらえるよう、アドバイスするように心がけています」と話す
家具とケアサロンという異業種の組み合わせだが、「施術に通っている方が家具の修理を依頼されることも多く、モノを大切にされる方は健康にもすごく気を使ってらっしゃることがわかりました」(吉岡さん)。
今後は木工や縫製の技術を持ったシニア世代の方に修復を手伝ってもらい、ライフワークとして技術を活かせる機会も作りたいと考えている。「シニアの方がお孫さんを連れてきて仕事ができるような、そんな人が集まる場所になれたら嬉しいです」と吉岡さんは話している。
以前は画家の住居だったこの家。この本棚は元からあったもので、吉岡さん、吉川さんの蔵書の他、お客が持ってきた本が並べてあり、読むことができる
店の片隅に置いてある、吉岡さんの実家(山形県)から持ってきた長火鉢。この冬はこれに炭を入れ、お客にお餅を焼いてもらおうと考えている
店内では吉岡さんが海外で買い付けてきたヴィンテージ雑貨も販売(通販もあり)。
食器の一部はカフェ&バーでも使っている。
吉岡さんの実家は江戸時代から8代続く床屋。祖父の時代の理容店の椅子も修理して置いてある
バーカウンターは吉岡さんの祖母が使っていた桐ダンスをリメイクしたもの。同様のリメイクも受け付ける
オープン | 2017年6月 |
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客層 | (家具)40代以上、(カフェ)20代以上、(サロン)40〜50代 |
備考 | 店舗面積/カフェ約40平方メートル、工房約15平方メートル、サロン約15平方メートル 男女比/女性:男性=7:3 kainaは家具とカフェ&バーの営業日は土日・祝日の13〜21時。平日は修理作業でお休み。ケアサロンの営業日は月〜日曜、祝日で、定休日は水曜。完全予約制。 |
第475号(2019/11/10発行)7面