繁盛店の店づくり vol.209
看板も本棚も本格派手づくり
古書まどそら堂 代表 小林良壽さん
多摩美術大学卒業後、立体イラストレーションや造形製作、キャラクターデザインなどの仕事に従事。以前から古書が好きで、蔵書があったことから「古書まどそら堂」をオープン。「国分寺は文化的な方が多いのか、面白い本を持って来られる方が多いですね。絵本やサブカル系の本を積極的に買取りしています」と話す
あまりのきれいさに印刷のように見えるが、店の看板はすべて小林さんの手書き。よく見ると筆で塗っていることがわかる。
ガラスに貼っている文字も、小林さんがカットして製作した
「レアでなくても、かわいかったり味わいがある。その人にとって感動できる何かがある本。情報を得るだけでなく、物としての魅力がある本を並べたいと思っています」。そう話すのは古書まどそら堂店主・小林良壽さんだ。
店頭の3分の1は絵本や児童書。あとは文学やデザイン、サブカル系の本が占める。「古本屋を始めてから絵本の面白さに目覚めました」と小林さん。
最近の若いお客については「若い人はあまり本を読まれてなくて、本を読書する対象として見ていないように感じます。古本屋ではなく雑貨屋として来店され、本棚を見ているようで、本自体は見ていないように感じます」と話す。
そのせいか「おすすめ本は何ですか」と聞かれることも多いそう。小林さんはどんなジャンルについて興味があるかを聞いて、本を選んでいる。
開店当初は接客経験がまったくなかった小林さん。お客への対応もたどたどしかったそう。しかし、開店後1〜2年経った頃、街の人々との繋がりができ、「単独で店をやるより、街の中の開かれた場所、交流できる場所になろう」と考えるようになった。
現在は、国分寺のイベント「ぶんぶんウォーク」に、国分寺ブックタウンプロジェクトのメンバーとして参加。自店企画「古本釣り堀」(紙の魚の中に本が入っており、釣り上げた本がもらえる)も行なっている。この他、年に数回、本の朗読会を開いたり、他のイベントにも参加するなど、開かれた店づくりをしている。
「妄想ですけど、国分寺カルチャーが集合した施設が作れたらいいですね。本屋もカフェも映画館も住居も、介護施設もあるような(笑)。国分寺はヒッピー文化が盛んだったところだから、そういう芽はあるかも。実現できたら、みんな幸せだと思います」
店内の壁にしつらえてある棚も小林さんが板を購入して作ったもの。わざと削って味を出している
店内奥の棚は、りんご箱や杉板を使って作られている。洋書や雑貨、絵本などが並べられていて、見応えがある。
「店内を古本屋のスタンダードな形にはしたくなかったんです。棚も1つのオブジェとして見てもらえるようにしています」と小林さん
赤ちゃんをあやす「オルゴールメリー」が印象的なディスプレイ。昭和レトロな本や塗り絵、雑貨も扱っていて、そうした商材はよく売れる
入り口に絵本の棚があり、親子連れがよく訪れる。近くに大学があることから、学生の来店も多い。右手にある黒い本棚は移転前から使っているもの。その他の本棚は手作りの他、アンティーク家具などを什器として利用している
まるでお店のプロモーションビデオ!
まどそら堂のFacebookなどから見ることができる「まどそら堂〜ちいさな古本屋さんのショートフィルム〜」。
まるでお店のプロモーションビデオのようだが、同店が製作したのではなく、映画監督の坂田航さんからの依頼で、場所を提供。このフィルムをきっかけに、来店するお客も増えた。
さらにこのフィルムがコンクールで入賞(下写真)。話題となった
オープン | 2013年5月(2015年5月に現在の場所に移転) |
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客層 | メインの客層は20〜30代 |
備考 | 店舗面積/約7坪 在庫/約1万冊(バックヤード含む) 古書まどそら堂は当初3坪の店からスタート。その後、国分寺最古のマンション「国分寺マンション」の地階に移転した。 |
第476号(2019/11/25発行)10面