骨董買取の技法 第14回
!要注意! 鉄瓶が100万から15万に下落
先日の終わりに、S会という、非常に格式のある会の大会がありました。毎年この時期に開催されるのですが、数千点ほど高価な美術品・骨董品が集まります。(1点1億円以上の商品もたまにあります。) 当社もこの会の大会で、ためてあった名品から珍品まで様々な商品を売却します。ここ数年は、どこの会もそうですが中国の品物がかなりのウエートを占めていました。しかし、今年は少し様子が違いました。今回はこのことについてお話します。
もちろん、元々名品と言われる中国の官窯(宮廷などで使われていた陶磁器) などは、相変わらず売れています。しかし今まで市場やヤフオク!での華であった、鉄瓶や銀瓶などは惨憺たる状態になりました。一時期は100万円ぐらい売れていたものが、15万円ぐらいで落札されていたんです。・・・この会も、ネットで売却する業者も参加します。彼らが見向きもしなくなるのですから、本当に売れないのでしょう。オークファンなどを見るとネットでは、結構高値で売れているものもありますが、これは鵜呑みには出来ません。中央で、ある商品が下落するとその傾向は地方にも伝播していきます。これは1年前ぐらいに中国経済の悪化により顕著になり、種々の商品が下落している動きとパラレルな現象です。おそらくバブル以前の相場近くまで下がっていくものだと思います。この手の商品を買う場合は、数カ月前のデータは信用せず、なるべく直近のデータだけを参考にしましょう。
よく一般のお客様から、買取問い合わせのある品物に桐箪笥があります。ご存知のように着物の需要の減少とともに、桐箪笥の需要も減っています。新品だと数十万円で売られる桐箪笥も、交換会では状態の良い物で数千円といったところでしょう。状態が悪いと、売れない場合ももちろんあります。ですから、もったいないと思いながらも、お断りすることが多いです。
≪ワンポイント≫
ガレの盆
ガラスで有名なガレの家具などは、公開オークションなどでは売れています。ガレは、家具以外にも、盆などの木製品をプロデュースしてるので要チェックです。
また通常の箪笥に関しても、15~20年前ぐらいの古民具ブームというのがありました。例えば旧家にあった階段箪笥などは、状態が良ければ軽く50万円オーバーでした。しかし古民具ブームも遥か昔に去り、金具によほど魅力のあるものぐらいしか売れていません。私の知る限り、和家具は寂しい限りです。
しかし、売れるものが全く無い訳でもありません。まず、黒田辰秋のような作家の作品は高値です。黒田辰秋は、前回取り上げた民芸運動などの作家の一人です。また、アールデコ様式の商品なども高値です。帝国ホテルで使われていた、フランクロイドのデザインの椅子がたまに出品されることがありますが、1脚数百万円オーバーです。
では、ヨーロッパ製の家具はどうでしょうか?よくお客様の家にあるのが、イギリスのアンティーク家具です。これも専門店で買うと非常に高価ですが、日本ではこれらの受け皿になる市場がないのが現状です。デザインなどがよければそれなりには売れますが、その物の持つ正当的な価値ではなかなか売れません。
藤生 洋
<プロフィール>
昭和42年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、ロッテの財務部で勤務。サラリーマン時代から骨董市に通う。歴史好きが高じて平成11年、31歳で起業。ネットオークションや骨董市で骨董品の販売をはじめる。平成13年には「(有)北山美術」に改称。平成24年には骨董の業者間オークション「弥生会」を3社共同で立ち上げ、会員数200社の規模に拡大する。現在は店舗と事務所を東京・千葉・札幌に展開している。骨董店での修行無しに独自に事業を軌道に乗せた手腕が話題になり、 2冊の著書を上梓。
399号(2016/09/10発行)6面