第15回 年末に向けて売れ筋トレンドを見極める
2015年も残すところあと1ヶ月となりましたね。皆さん年末年始に向けて慌ただしくお過ごしかと思います。この時期の商戦をしっかりと乗り切るために、最近の市場相場のトレンドと今後の予測についてお話します。
中国・上海株式市場の急落「チャイナ・ショック」の影響から、7~8月は多くの古物市場で相場が下落したのは記憶に新しいことと思います。その後、9月には中国の株安が一服。タイミング的に、決算月で多くの在庫を一掃した企業が再び買い付けに走る10月と重なり、秋口は相場が持ち直しました(直前の香港で開催されたジュエリー・ショーの売上が大方の予想に反して好調だったことも市場の買い気を誘ったようです)。
ギャラの重要性より高まる
しかし、小売については8~9月はどこも店頭の売れ行きはやや渋い様子が見受けられました。相場も持ち直してきているとはいえ、7月以前に比べると全体的な見劣り感は否めず...。今なおくすぶる中国経済の懸念もあり、景気の上向き材料がない限りこうした状況が続きそうです。年末は「売れる商材」を見極めたバイイングが、これまで以上に大切になってくると思います。
例えばロレックスならば、海外向け商品としても人気の高いデイデイト、特にダイア巻きのモデルなどは押さえておいて間違いのないところ。また、スポーツ系のモデルならギャラ(ギャランティ=保証書) 付属が必須。ギャラの有無で値段が5~10%変わってくることさえあります。
特に、2010年以降に製造されたモデルはシリアル番号から年式を判別できないため、ギャラの日付が製造年の目安となります(大きく差は出ませんが、基本的には新しい日付が好まれます)。また今年の7月1日以降に正規店で販売されたモデルについては、日本ロレックスの保証期間が2年間から5年間へと大幅に延長されましたから、ギャラの重要性はさらに高まってきます。
また、海外の年末商戦に向けた取り組みも視野に入れたいところ。最近は古物業界内でも海外のオンラインオークション「eBay (イーベイ)」への出品が盛んなため、アメリカ、特に北米マーケットのトレンドを意識した商品も見逃せません。オメガのスピードマスター・プロフェッショナルや、ルイ・ヴィトンのAB~Bランク程度の状態のバッグは、定番かつ狙い目です。
大手の会社を筆頭に活用されているeBayですが、注目すべきは個人規模での輸出ハードルが下がったこと。今後、小規模の質屋やリサイクルショップも相次ぎeBayへの出品を加速化させれば、前述の商品やその他の北米マーケット向けの商品相場は上がっていくでしょう。
なお市場によっては、外国人バイヤーがこの辺りの商材を中心に買い付けを行っている光景が見られます。いまひとつ手持ちの情報だけではトレンドをつかみきれないなら、彼らにならって、トレンドや相場をチェックしてみるのも参考になりそうです。
まだまだ先行き不透明な経済情勢が続きますが、年末年始に着実に利益を出していくためにも、売れ筋商材を判断して買い付けを行うことが非常に重要です。経済や業界のニュースはもとより、参加している古物市場の下見期間などを活用し、アンテナを高く張って情報収集されることをおすすめします。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
380号(2015/11/25発行)13面