第28回 どこで売るか、何を売るか、販売チャネルの選び方
古物市場で競り勝って手に入れた商材!...なのに、引き合いがなくて売りさばくのに一苦労なんて経験は誰しもあるはず。突発的な為替の変動やトレンドの移り変わりなど、仕方ない面もありますが、そもそも「販売チャネル」の選択を誤った...なんて声が聞こえてくることも。商材をどこで売るか。小売りに卸売り、どちらも一長一短があるため、商材の特色と自社の販売戦略を鑑み、最適な販売ルートを選んでいく必要があります。
例えば、店舗をお持ちの方で利幅を追求するのでしたら市場価格が高い「小売り」が第一の選択肢に入ると思います。各企業によって差はあれ、市場で仕入れた商材を商品化するまでには検品や研摩、オーバーホール等のメンテナンスが必要ですが、そのコストを吸収したとしても、卸売りより高い市場相場は魅力です。
小売や卸、その時点でベストな選択を
いまは米国大統領選に端を発する「トランプ・ショック」の影響で、為替は円安トレンド。腕時計を中心に中古市場の相場が上がっていますから、どこの企業もいまは小売りに力を入れています。特にロレックスは国内マーケットの品薄を背景に、為替の振れ幅以上の値上がりを見せているようです。ほんの一例ですが、春ごろまで古物市場で~110万円前後だったRef.16520 デイトナの白文字盤が、いまや市場で140万円以上の値をつけるほど。Ref.116520の黒文字盤もここ一ヶ月ほどで5~10%値を上げていますから、小売りで販売したときの旨味も大きいですね。
いいことづくめのようですが、在庫を抱えるリスクとは常に向き合っていかなければなりません。相場が急激に動いたときなど、含み損が出た場合には「耐えて小売りで粘るか」「損切り覚悟で古物市場に出すか」といった判断を迫られることもしばしばあります。
一方で、利幅は少なくなりますが、卸売りなら在庫リスクはある程度減らせます。需要の高いロレックスを始め、香港や北米といった海外マーケットに輸出することで在庫の回転を上げ、現金化のサイクルをスピーディーに回していけるメリットがあります。昨今は「eBay」を中心に、Webチャネルを使った海外卸売りも大分ハードルが下がってきていますから、国内相場の見通しが思わしくないか、トレンドの足が早そうな商材であれば、海外に卸してしまうのも選択のひとつです。
腕時計やバッグ、ブランドジュエリーといった定価がある商材は、為替による相場変動の影響を受けやすいアイテム。自社の販売戦略と照らし合わせて(利幅を追求するか) (回転率を重視するか) 2つの考えを天秤にかけながら、そのタイミングでベストな販売ルートを選んでいくのが望ましいですね。
また、定価がないノンブランドのジュエリーは値付けが難しい反面、先に挙げたアイテムに比べれば、自社の戦略に合わせた販売ルートを選びやすいアイテムといえるかも。相場感覚と販売力がものをいうジャンルだけに、販売ルートがハマれば大きな利益を生むことも。国内(小売り、卸売り、古物市場) や海外卸売り、いずれのチャネルも視野に入れることができます。
今年は後半から為替の振れ幅が大きくなり、さながら地金相場のごとく値動きを注視する時期もありました。いまは円安傾向が続いていますが、いつまでこの流れが保つかは分かりません。また、来年早々にも再びやってくる「旧正月」は、香港や中国為替市場が休場するため、同時期の中古市場の動きを読むことが難しくなります。今から念頭に入れておいた方がいいですね。
さて、2016年のコラムは今回が最後。一年間お付き合いいただきありがとうございました。連載3年目に突入した2017年も様々なトピックを取り上げていきますので、どうぞよろしくお願いします!
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ
執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
Profile
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
406号(2016/12/25発行)17面