コンサートプロモーターズ協会 石川篤総務委員
「チケットは、お金儲けの道具ではありません」。6月1日こんな声明と共に、音楽業界団体公式チケット二次流通サービス「チケトレ」が正式オープンした。高額転売に反対を表明しており、額面価格での売買を行う。これに先駆け業界団体の一つ、コンサートプロモーターズ協会石川篤総務委員に、音楽業界から見たチケット二次流通市場の現状と今後について詳しく聞いた。
日本プロモーターズ協会 石川篤総務委員
――なぜこのタイミングで、「チケトレ」をオープンされたんでしょう。
チケットキャンプさんがTVCMを打ち出したところから、我々業界団体の危機感が強まりました。有名タレントさんを使って非常に大々的にプロモーションされていましたよね。それまでどちらかというと後ろめたさを感じながら行われていた高額転売が、一気に公式感、正当感が溢れる行為に変わってきたなと。
――一旦整理したいのですがダフ屋行為はもちろんNGですが、一般の方が正規で手にしたチケットをチケキャンなど経由で、結果的に額面以上で売買するということも問題視されているんでしょうか?
僕らとしては、そもそも誰であろうが高額に利益目的で転売するのは、反対している立場です。コンサートのチケットは株券のように投資目的ではなく、エンドユーザーが普通に消費してくれることを想定し作っているものです。例えばステージを組み上げる費用、東京ドームなり会館を借りる費用、スタッフの費用などを合算し1人当たりのお客さんで割り算して、適正な値付けをしているんです。本来ならグッズやCDの購入にあてたり、複数の公演に行けたはずなのに、高額転売のためにそれが叶わなくなるのは、ユーザーにとっても業界にとっても困る。外部の全く関係ない人が介入し、この利益を奪うことは許せません。
ヤフーから協業の話あったが...
――チケットキャンプについてはどう思われていますか?
実は、運営するmixiさんから利益の一部を還元したいという話があったんです。しかしこちらは、〝そもそも高額転売を辞めてほしい、それが最初〟という主張をしたので折り合いがつきませんでした。やっぱり搾取されちゃっている構造が問題で。搾取分が僕らへのリターンより上回っていたら、僕ら音楽業界は死ぬんですよ。まずは原因になっている高額転売をストップしてもらえなかったら、共存はできません。
――他の二次流通サービスはどうでしょう?
ヤフーさんとエイベックスさんが、新たな二次流通サービスを始めますよね。ヤフーさんからジョインしようという話はありましたが、お断りしました。ヤフオク!があるからです。中長期的にチケットの出品は止めるつもりだとはおっしゃっていました。じゃあそのスケジュールや明確な行動計画を見せてほしいというお話をしたのですが、未だにお答えはありません。
僕らの趣旨と同じような発想で行動していただけるのであれば、二次流通のプラットフォームを阻害するつもりはありません。しかし高額転売の場を提供しているのに黙って放置しておくというのは、いかがなものかと見ています。
――これらに代わるものが「チケトレ」ですが、ネット上などでは手数料の高さなどが問題視されていますね。
チケトレはあくまで救済策、利用を促して大きく商いをしようとは思っていません。
他の業界において考えていただきたいのですが、旅行業界やホテルなどは当日キャンセルすればキャンセル料を100%取られますよね。それに対して批判の声が上がっていますか?お客様のために席を用意し、お客様の都合でキャンセル、その代りキャンセル料くださいね。これは正当な売買行為として、他の業界ではされていることです。
――ダフ屋行為がネットに移っているのではないかという懸念もありますよね。
そうですね。実は最近目立つのが、システムを使ったもの。強制的にばばっと、一般ユーザーが追い付かないスピードで、チケット抽選のエントリーを何千件とするんです。そういうふうに一般ユーザーが買えない状況を作り、勝手に値段を釣り上げる。我々の商売の妨害であり、お客さんの気持ちを踏みにじる許されない行為です。
今団体としてこういったネット上のダフ屋行為も、迷惑条例で逮捕できるよう条文を追加して欲しいと警視庁に働きかけています。
また別のアプローチとして、議員の先生にもお願いしています。会長が石破茂さんのライブ・エンタテインメント議員連盟というものがあります。先日、サカナクションの山口一郎さんに同席してもらい、議員の三原じゅん子さんや、元SPEEDの今井絵理子さんも参加していただき会合を開いたんです。ネットダフ屋の問題点と、欧米の先進的な対策などをプレゼンしてきました
417号(2017/06/10発行)9面