定額レンタル成功の要因は?勘所は在庫、提供価値にあり
2019年06月09日
シェアリングエコノミー(共有経済)が注目される中、続々とサービスが登場しているのがモノのシェアエコと呼ばれる定額レンタルだ。ただ、既に撤退するサービスも相次いでおり、容易ではない側面もある。サブスク(定額課金)モデル成功の要因を探った。
「これほどまで人気に偏りが出るとは...」ブランド腕時計の定額レンタルサービス「カリトケ」を運営するクローバーラボの小川紀暁常務取締役はこう話す。
2017年のサービスリリースからしばらく、保有在庫とユーザーのニーズマッチングの課題に直面。ロレックスの定番モデルなどユーザーが希望する商品をすぐに借りられない状況が珍しくなかった。
レンタルサービスの場合、貸し出す商品の調達が先行する。幅広い商品ラインナップを揃え利便性を高める必要がある一方で、カリトケのように人気が偏るケースもあり、アイテムの種類に加え数量も求められる。先行する調達コストを抑えながら在庫数を増やし、レンタル希望品とのマッチング率を高め、継続利用を促せるかが成功のカギを握る。
鍵は調達方法とマッチング率
ブランドバッグの定額レンタルサービス「ラクサス」を運営するラクサス・テクノロジーズでは、有料の利用会員が2万人を超える中、在庫数は3万4000程度。AIを活用したアンケートをもとにユーザーが気に入りそうなブランドや商品の提案を行っている。
▲高級ブランドバッグレンタル「ラクサス」。2015年にリリースし、会員は約30万人で、うち有料会員が約2万人。月額6800円
「最初はみんなスタンダードな商品を借りるが、慣れれば奇抜なデザインも楽しんで借りてくれている」(児玉昇司社長)と話す。
また、同社では在庫の3分の1に当たる1万2000はユーザーから調達している。これなら、仕入れの問題が発生せず、貸出が発生した場合に貸出ユーザーに対価を支払えば済む。同サービスの利用者の内、4000人程度は借りる一方で貸出も行っていると言う。児玉社長は「ゆくゆくはユーザーから調達した商品だけで勝負していきたい」と話す。
カリトケでもユーザーから時計を預かりレンタル運用を行っている。個人からの調達が1割を占め、これにより、レンタル待ちの状態を2〜3ヵ月から1ヵ月程に短縮することに繋げている。現在は、法人からも借りる形の調達を始めている。
レナウンが提供する男性向けスーツの定額レンタル「着ルダケ」は、自社製品を貸し出す。製造コストの問題はあるものの、種類も限られており受注生産で対応するため、ミスマッチは起きにくい。
どんな社会課題を解決するのか?
▲スーツレンタル「着ルダケ」。2018年リリース。月額4800円~で、「スタートアッププラン / クールビズ」の場合、春夏にスラックス5本、秋冬にスーツ2着を借りられる
レナウンでは月額4800円からサービスを提供している。価格設定は、「実際に買うと6万円程度のスーツを提供しているが、値段を先に決めたわけではない。ユーザーに行った事前調査で『いいものを着たい』、『高すぎるのはNG』という声を受け、利用者の生活をもっと豊かにしたいという想いから逆算し、この質の製品レベルとなった」と越田耕一ユニットマネージャーは話す。
またカリトケでは、月額3980円〜1万9800円まで4つのプランを用意しており、最も利用の割合が高いのは最上位の1万9800円で4割を占める。
▲高級腕時計レンタル「カリトケ」。2017年にリリースし、会員は約1万7000人。プランは4種類あり、最も高額な月額1万9800円プランのユーザーが約4割を占める
価格設定は提供する商品やターゲットによって異なるものの、どのような価値を提供できているかが重要だ。多くの定額レンタルサービスが登場してきているが、中には販売価格を割賦にしただけの通販のようなサービスもある。ラクサスの児玉社長は、「アメリカで成功していても日本では失敗するケースもある。社会課題を解決するサービスでなければうまくいかない。商売する側の理屈を押し付けるのは、ユーザー目線ではない」と指摘する。
第464号(2019/05/25発行)20面