《注目の新ショップ》パースフル、財布専門の修理店
2019年06月17日
財布専門の修理店
全国から注文が殺到
「ブランド財布を直してくれる修理専門店がない」「メーカーに依頼すると高い」という声から生まれた財布修理専門店「パースフル」(運営:アトランダム【東京都文京区】)。財布修理に特化した店舗は全国的にもほとんどなく、全国から注文が殺到。急成長を遂げている。
革製品の中でも、財布の修理はとりわけ難しい。一番多い修理依頼の「ファスナー交換」では、ほぼ全部のパーツを取りはずさないといけない。ファスナーを取り替え、元どおりに組み立て直すのが大変なのだ。
革に残っている針穴に合わせ、1針1針、厚物用のミシンの針を手で落としながら縫い合わせる。新しく穴を開けてしまうと、最悪の場合、革がちぎれる可能性があるからだ。
▲財布修理のミシンかけは1針1針、手を使って針を落としていくので、時間がかかる。慣れている職人さんでもファスナー交換には2時間ほどかかる(下写真は見やすいように、別の革を使って縫い方を再現してもらったもの)
そして、財布は小物ではあるがパーツの数が多い。1つ1つを元の位置に正確に戻していかないと、一カ所ずれただけで、どんどん形が歪んでいく。
「カード入れの部分が数ミリずれただけでも、ファスナーが閉まらなくなることもあります」と職人の岩瀬さんは話す。
▲店舗で作業をする岩瀬さん。来店したお客の相談にも乗っている。
現在、依頼は郵送と来店が半々。お客は都内はもちろん関東一円から来店。修理依頼が多いブランドはルイ・ヴィトンで、全体の4分の1を占める。その他、プラダ、グッチなど。女性ものならアタオ、男性ものならガンゾの依頼が多い。
この4月からは修理の他、クリーニングや染色のサービスもスタートさせた。修理ではファスナー交換が全体の半数を占め、次に多いのは留めづらくなったホック(金具)の交換や縫い目のほつれ直しだ。
この珍しい「財布修理の専門店」を立ち上げたのは、アトランダム代表取締役の飯島悠太さん。実店舗をオープンしたのは2018年7月だが、その1年半ほど前からウエブ上で修理を受け付けていた。注文数が増えたことから実店舗を構えた。
「財布を修理したくてもメーカーが受けない、特殊なものは修理できない、料金が高いといった理由から、どこに依頼していいかわからなかったお客様がうちを選んでくださっていると思っています」
▲アトランダム代表取締役 飯島悠太さん
ニッチなニーズを掘り起こすと同時に、職人の待遇改善も目指してパースフルを始めた
大手がやりたがらない面倒な修理をすることで、注文数は毎年増え続け、この事業の成長率は前年比300%だと言う。飯島さんは今後はさらに技術を高め、実店舗を増やしていきたいと考えている。
▲革を交換する時には、元の財布の革の厚みと新しく取り付ける
革の厚みを揃えるため、革をすく機械にかけて調整する
▲ミシンかけの前に、革と革を接着剤で貼り付けて、ずれないようにする
●店舗データ
●オープン/2018年7月
●店舗面積/約6坪
●スタッフ数/1〜2名
●客単価/約1万2000円
●客の男女比/男:女=7:3
●備考/パースフルを運営するアトランダムは、他にスニーカー修理&クリーニングの「スニーカーアトランダム」も運営している
第465号(2019/06/10発行)9面