《着物リサイクル春夏秋冬》第227回 サマーフェスティバルat神田明神
2019年08月09日
中古着物を販売するたんす屋社長の中村健一氏が、自社の取り組みなどから中古着物業界について切る、本紙連載企画「着物春夏秋冬」。
▲東京山喜 (店名・たんす屋) 中村 健一 社長
1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。
浴衣ショーや公式参拝、交流会を通し
今後の"覚悟"をお客に伝える
7月14日、15日の二日間、神田明神の文化交流館地下1階「EDOCCO STUDIO(エドッコスタジオ)」でサマーフェスティバルを開催する。昨年12月15日にグランドオープンした文化交流館にお声掛け頂き「j-culture着物屋」を出店させて頂いて以来、初となるイベントである。
同時開催として、浴衣ショーを計画している。「j-culture着物屋」は、江戸の総鎮守神田明神で、着物を着ての日本文化体験を提供することを目的に出店したが、まだまだその本来の目的を果たす迄には至っていない。
そこで今回は、エドッコスタジオのステージを使って、たんす屋のお客様に浴衣ショーに無料で出演して頂くイベントを企画した。これは、着物の中でも最も敷居の低い浴衣を着てステージに立って頂く機会を提供しようという考えである。
ショーの案内を声掛けの掴みにも
現在首都圏のたんす屋40店舗と期間限定の「サマーショップゆかたバザール」20店舗、合計60店舗で、このサマーフェスティバルの案内をしている。このサマーフェスティバルでは、夏物の着物や帯を一堂に集めて販売することが大きな目的ではあるが、「浴衣を着て神田明神の文化交流館で浴衣ショーに出ましょう‼」という声掛けが、浴衣販売の一つの掴みになっている。
「浴衣ショーに出るのは、恥ずかしい!」というお客様には「同時開催で、東京五輪音頭体験会がありますから、参加されませんか?」と続けて案内する様になっている。実際に浴衣ショーに出て頂けるか、更には東京五輪音頭体験会に参加頂けるかはお客様次第であるが、店頭で浴衣販売をする折のきっかけとして、大いに活用するようにしている。
公式参拝に顧客を招待
更に今回は、たんす屋の大切な顧客の方々から限定30人を招待して、神田明神の公式参拝を計画している。神田明神のご祭神は、一之宮が大己貴命(おおなむちのみこと)、大黒様で縁結びの神様。二之宮は少彦名命(すくなひこのみこと)、えびす様で商売繁昌の神様である。更に、三之宮は平将門命(たいらのまさかどのみこと)で除災厄除の神様だ。
天平2年(西暦730年)に創建され、西暦2030年には鎮座1300年を迎える江戸の総鎮守だ。さらに弊社の登記上の本店(中央区日本橋人形町)の氏神様である神田明神にご縁を賜わり、出店を機にたんす屋の特別な顧客の皆様と一緒に公式参拝させて頂ける事は私にとって無上の喜びである。
交流会でお客の声を真摯に聞く
参拝後には明神会館で、顧客の皆様と交流の時間を持たせて頂く予定だ。
この試みは、いつもご愛顧頂いているお客様の声を聞かせ頂きたいとの思いからである。今までは、私の思いを一方的にお客様にお伝えすることが多かったが、今回はお客様の声に真摯に耳を傾けてみる機会を設けてみようと考えた。
その後に、私もたんす屋を20年経営してきて感じていることを少しお伝えする予定である。具体的には、銀座シックスの観世能楽堂で8月25日に開催を予定している日本文化発表会や、9月22日に計画している五大陸着物コレクションのこと、更に神田明神文化交流館のイベントホールで11月に開催される世界カラオケ大会に合わせて、エドッコスタジオで予定している着物カラオケ大会のご案内の事などだ。
ここで、今後たんす屋が着物を着ての日本文化体験を、ビジネスの中に取り込んでいきたいという考えをお伝えする予定だ。また、現在開発中のリノベ着物中村屋とリノベ帯中村屋の考え方もお客様にお伝えする。これは、着物文化の本質は着物の洗い張りにあるという、私も最近になって気づかされた真実を顧客の方々にもお伝えしたいと考えたからだ。
当然ながら、私どもが提供したいと思っているサービスや商品がお客様に喜んで受け取って頂ければ、弊社の継続した成長が見えてくる。逆にそれが弊社の独り善がりに陥ってしまった場合には、会社そのものの存在が危ぶまれる事態を招きかねない。
着物の売上より大切に思うこと
この様な思いで、今回「サマーフェスティバルat神田明神」を企画した。今回のイベントは、夏物の着物や帯が予算通り売れるか否かが重要であることは言うまでもない。しかし、それ以上に大切に思っていることがある。それは、足元のイノベーションは、着物や帯のリノベーションで、着物文化の本質が洗い張りにあることをお伝えすることから始め、更に中長期のイノベーションは日本文化発信型着物屋として、着物を着ての日本文化体験を一人でも多くの方々に提供したいという覚悟をあらかじめ顧客の皆様にも知っておいて頂くことだと考えているが、いかがだろうか。
第468号(2019/07/25発行)18面