ヴェスティエール・コレクティブ、フランス発の中古品マーケットプレイス
2020年01月11日
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フランス発の中古品マーケットプレイス
ヴェスティエール・コレクティブ Fanny Moizant(ファニー・モワゾン)Co-founder
フランス発の中古品のマーケットプレイス「Vestiaire Collective(以下:VC)」。ブランド品や衣料品を中心に取り扱いを拡大しており、利用は世界50ヵ国以上、900万人を超えるユーザーを抱える。同社では日本のマーケットにも注目しており、今後力を入れていくと話す。共同創業者であるファニー・モワゾン氏に話を聞いた。
全ての商品を2段階でチェック
真贋とクオリティをコントロール
--ヴェスティエール・コレクティブ(以下:VC)とはどんなサービスですか。
VCは、みんなが探している、欲しがっている、プレミアムなセカンドハンドのファッションに特化したマーケットプレイスです。販売者と購入者双方のコミュニティの上に成り立つプラットフォームでもあり、現在、世界50ヵ国以上に900万人を超えるユーザーがいます。サイトへの掲載商品は150万点あり、毎日8000点の商品がアップされています。
--どういった販売形態になるのでしょう。
セラーの方はCもBもいらっしゃって、委託販売という形式になります。ただ、歴史的にCtoCから始まったサービスで、BtoCは5年ほど前から始めた為Cの出品者の割合が多いです。出品後はVCが購入者とやりとりを行い、クレームなどが発生した場合もVCが対応しますので、セラーの方の手を煩わせることはありません。
--ユーザーはどういった方になりますか。
VCは既にフランスでの地位を確立しています。そのため、私たちの一番大きなユーザーベースはヨーロッパ、次いでアメリカ、そして現在APEC地域におけるユーザーベースが伸びています。男女比ではやはり女性の方が多いですね。歴史的にハイブランドの取り扱いから始まったので、現在までは年齢層は高めの方が主なユーザー層になっています。ですが、若い層を取り込みたいと考えていて、ストリート系やデザイナーズブランドを強化していきたいと考えています。
--どんな商品が売れていますか。
ブランドバッグが最も多く売れています。エルメス、LV、シャネル、グッチなど。次に時計やアクセサリー。金額では時計が2番目かもしれませんね。ロレックスやカルティエ、シャネルが売れ筋になります。
--世界中で販売されていますが、商品はどういった流れになっていますか。
ロジスティック面でのハブは、パリ、ニューヨーク、香港の3ヵ所。商品が売れた場合、この3ヵ所の一番近い場所に送って頂く形になります。ここにはそれぞれ真贋の担当者がいて、ここで真贋を行った後に世界中にいる購入者に商品を発送します。
--全ての商品の真贋を行っているんですね。
最も重要な点は、VCが信頼と保証を提供していることだと考えます。真贋とクオリティコントロールが2段階で入りますから。まずはキュレーションの段階です。ユーザーが商品の写真を撮り、商品情報と合わせてVCにアップロードすると、VCのキュレーションチームが一つ一つそれを確認し、それら詳細が正しいものか確認してからウェブサイトに掲載されます。2回目のチェックは、販売者と購入者の間で売買が成立した後です。販売者は該当のアイテムをVCのロジスティックハブに送り、そこで知識と経験のある真贋、クオリティコントロールチームがそれを検品してから購入者に発送となります。
--出品があっても全ての商品が掲載されるわけではないのですね。真贋を行っていることの信頼が高額品の購入にもつながっている要因なのでしょうね。
VC上には、ラグジュアリーブランドからストリートウェアまで150万点を超える幅広いアイテムが掲載されています。カテゴリーも、女性用アパレル、男性用アパレル、時計、宝飾、靴等など幅広いため、どんな商品を探している消費者であっても、VCでは何かしら魅力的なアイテムが見つかるという点もユーザーから支持されている要因だと思います。
ファッション「所持」から「使う」時代に
サステナブルな解決策として創業
--創業の経緯について聞かせてください。
2009年に共同創業者のSophie Hersan(ソフィー・エルソン)と協力してVestiaire Collectiveを立ち上げました。この時期、ファッションに関する人々の消費行動がそれまでとは大きく変わってきていることに気が付き始めたのです。より沢山買うけれど、実際に着用するのはほんの少し...という風に変わってきていました。
ソーシャルメディアやファストファッションの台頭で、私たちは物を「所持する」時代から「使う」時代に移ったのだと思います。そしてこの「使う」時代に、消費者はみんな、この消費行動に対するサステナブルな解決策を必死に探していました。
気に入って買った、気に入って使っていたアイテムのライフスパンを伸ばし、ファッションに係わるごみを減らす...VCを立ち上げたのは、そのきっかけやそれを実際に行う機会をみなさんに提供するためでした。
私の母がブティックを経営していたので、その母を通して、幼少期や10代の頃を通してファッションに関する知識を得たのも大きいと思います。ファッションは、常に私のDNAにあるのでしょう。
--VCと他の中古品を扱う類似や競合サービスとの違いはどういった点にあると思いますか。
それについては、「コミュニティ」、「カタログ(商品の点数と内容)」、「フランスを体現しているということ」、そして「循環型エコノミーの一端を担っている」ということの主に4つが挙げられます。
先程もお話しましたが、900万人を超える人々がVCサイトにアクセスしています。東京の女の子が、パリに住んでいる誰かから、スマートフォン上でとても簡単にワードローブを購入できるんです!そして、VCサイト上には150万点を超えるアイテムがあり、8000点を超えるアイテムが日々アップロードされています。
そして、VCは正真正銘フランスにルーツがある、パリジャンの会社です。そして世界中にその足跡があります(パリ、ロンドン、ミラノ、ベルリン、ニューヨーク、そして2017年から香港に拠点)。
また、リセールは、確実に、ファッションにおけるサステナビリティを促進し、環境保護についての認知を高めるベストなソリューションです。VCは今後もこの循環型エコノミーを推し進め、VCを利用することで、皆さんがサステナビリティに参加いただければと思います。
--フランスにルーツがあるというお話でしたが、ブランドホルダーのお膝元であるEU圏でセカンドハンドのサービスが拡大しているというのは正直意外に感じましたが。
ラグジュアリーブランドが、二次市場のリテーラーを脅威とみなすのではなく、むしろ彼らと協力すべきなのはなぜか。これについて、ちょうどボストンコンサルティンググループと共にレポートを発行したばかりですので、ぜひ読んで頂ければと思います。
第一に、二次流通市場はラグジュアリー市場への導入部分です。中古のラグジュアリーアイテムを購入する人の多くは、新品が欲しくても手が届かない人たちです。セカンドハンド市場は、ブランド側にとって、こういった消費者にリーチする有力な手段です。こういった人たちが年齢を重ね、購買力が高まり、新品を購入するだけの経済力が整ったら、彼らは新品を購入する方にシフトしますから。
--確かに中古品はさまざまな面で、エントリー品として利用されていますね。
また、セカンドハンド市場は、ラグジュアリー商品の寿命を延ばし、ラグジュアリー市場における循環型エコノミーを形成します。サステナビリティを推し進めたい高級ブランドにとって、「責任のあるエコシステム」に参加することは誇りとも言えますし、ブランドをそのように位置づける、印象づけることはブランドの利益につながります。今日のサステナビリティに特に敏感な若年層の消費者を考慮すると、例えばVCとBa&sh、SMCP、JOSEPHといったブランドとのパートナーシップからも見受けられるように、特に当てはまることかと思います。
--事業拡大を続けている中で、現状の課題感はどんなところにありますか。
コミュニティを軸とするプラットフォームなので、カスタマーの声をしっかりと聴き、VCとしてのスタンダードや私たちのやり方をきちんと保った上で、みなさんが必要としていることにきちんと応えていくことが課題の一つです。
ローカライゼーションも引き続き課題の一つです。グローバル企業として、私たちのファッションDNAやブランド精神を保ちつつ、世界のそれぞれの市場について、その地域の嗜好や慣習を尊重し、適応していく。その最適なバランスを見つける必要があります。そして、常に課題の一つとして挙がるのが、VCはいつも時間がない!ということです。急成長していて、且つ野心的な企業なので、「何を優先すべきか」「その過程で何かを犠牲にすることなく目標を達成するには何がベストか」の見極めが重要です。
--2020年はどういった点に力を入れていかれますか。
香港、シンガポールなど既存のマーケットにおけるプレゼンスを引き続き高めていく一方で、新しい市場の開拓や新しいセラーの獲得もしていきます。
新機能の追加や既存機能の改善など、「コミュニティプラットフォーム」という、私たちの根幹を強化するための追加投資を予定しています。例えばコミュニティメンバー同士のコミュニケーションを促進する「ニュースフィード」機能のローンチなどを予定しています。
また、エコシステム内でのキープレーヤーとのパートナーシップ強化も引き続き重要課題です。サステナビリティに関する発想も確かなものにしていきたいですね。
--新たなマーケットへの参入も考えていますか。
もちろん、新規市場への参入を画策しています。VCは既に世界規模でのプラットフォームですが、更にこのコミュニティを大きくしたいと考えています。カスタマー(販売者及び購入者)の声を聴き、需要と牽引力のある市場でのプレゼンスを強化したいと考えています。
状態の良い商品の供給源として日本は確実に魅力的な市場
--日本のマーケットについてどんな印象を持たれていますか。
世界的に見ても日本は、セカンドハンドファッション、グッズに確固とした強みを持っていて、VCにとっても商品の供給元としてとても重要です。既存の、また今後新しく参加いただくセラーとの関係を強化するためにも、そして彼らが欧州や米国といった市場にアクセスしやすくなるように、今後も引き続き日本市場に投資をしていく予定です。セラーの皆様がデジタル化、グローバル化するお手伝いができればと思います。
一方で、需要の面でいうと、日本の消費者はファッションに造詣が深く、私たちのアプリでは特にビンテージのアイテムを探しているようです。このことから、消費者(購入者)サイドについても日本でのプレゼンスを強化できる可能性があると考えています。日本の消費者の皆さんは、ビンテージ商品の購入からVCを使い始め、将来的には出品もいただき、循環型のファッションシステムの一員になっていただけたらと思います。
--どういった点が魅力的なのでしょう。
セカンドハンドファッションに関し、日本は成熟し、安定している市場です。状態の良い商品の供給源として、VCにとって日本は確実に魅力的な市場です。ビンテージの商品についても日本は魅力的な供給源で、こういった商品についてもぜひVCに加えたいと思っています。
--日本向けにサービスを開始される場合、どんなことをされますか。
日本の販売者側に対し、ユーザーエクスペリエンスの強化のために投資をする予定です。日本円の導入や、日本に、より対応した配送のオプションを検討しています。
--日本での市場拡大を図る上でどんなことが課題と考えていますか。
言葉の壁とローカライゼーションが課題です。私たちは、コミュニティを重視しており、その国や地域に応じたコンテンツやその国/地域特有の嗜好を反映する重要性を感じています。
現段階ではVCの日本での認知度は決して高いとは言えません。日本における認知度の向上は成長の鍵ですし、また今後投資する際のポイントになります。日本市場については、需要と供給の構造や市場全体のダイナミクスについて更に理解を深めていく予定です。
(聞き手:本紙部長・瀬川淳司)
会社概要
Vestiaire Collective(ヴェスティエール・コレクティブ)
2009年にフランスで創業したセカンドハンドのリセールマーケットプレイス「Vestiaire Collective」を運営。1日に8000点の商品アップが行われており、150万点の商品を掲載。世界50ヵ国に900万人を超える会員を抱える。販売された商品は1点ずつ真贋とクオリティチェックを行いユーザーに届けているのが特徴。パリをはじめロンドン、ニューヨーク、ミラノ、ベルリン、香港にオフィスを構える。日本のリユース事業者で出品を行っている企業も既に複数社あり、2019年12月には中古ブランド大手のSOUが出品開始を表明した。
第479号(2020/1/10発行)12,13面