ジュエリー法務相談室 新田真之介先生に聴く「合成ダイヤを買い取ってしまったら?」
2020年03月31日
「弁護士視点から考える」
合成ダイヤ買取対策講座
~第3回 合成ダイヤを買い取ってしまったら?~
地方店でも合成ダイヤの誤買取発生
今回からは、具体的な事案を用いて、今後合成ダイヤモンドが持ち込まれた場合に、どのように対応すれば良いかを考えたいと思います。
〈相談事例〉(※実際の相談をもとに作成した架空の事例です)
「ある地方都市で宝石・貴金属買取店を営んでいます。あるお客様が来店され、1.0caratダイヤモンドリング(地金はPt999)を10万円で買い取りました。店頭では昔から使っているダイヤモンドテスターを使って「ダイヤモンド」の反応が出るのを確認しました。
そのお客様は自店に初めて来店した60代の男性で、住所は自店から車でも50分以上かかる隣の市から来ていました。「嫁に内緒で持ってきたから近くの店には行けなくて」などと言っていました。「いつ頃買われたものですか。」と聞いたときは「まあまあ最近よ」という程度のあいまいな返答でした。自店でいつも使用している「買取申込書」に住所・氏名・生年月日・電話番号・勤務先名称を書いてもらいました。
買取ご成約後、売却のために鑑別機関に出したところ、「これは合成ダイヤモンドです」と言われ驚きました。石を立爪から外してみると、爪で隠れていたガードル部分に「LABORATORY GROWN DIAMOND」と番号の刻印があり、海外の鑑定機関であるIGI(International Gemological Institute)のサイトにこの番号を打ち込むと、オンライン上で「LABORATORY GROWN DIAMOND REPORT」も見ることができました。
「合成ダイヤモンドが出回り始めていることは業界誌などで一応知っていましたが、まさかうちのような地方の小規模店にまで来るとは思っていませんでした。」
以前より、モアッサナイトの誤買取事案の相談はありましたが、2019年頃より「買い取った物が合成ダイヤモンドだった」という相談を地方のリユース店・質店からもいただくようになりました。
もちろん、技術的には、蛍光と燐光を判定する紫外線透過量検査装置を用いれば、ほとんどの合成ダイヤモンドは判別ができますが、それでも欺く側の技術もどんどん進化していくでしょう。自店でこのような事案が発生した場合、あなたはこの後どのように対応しますか?
次回は、対応策について紹介します。
新田 真之介(にった・しんのすけ)
宝飾小売店、買取店等の顧問・法律相談などを行うジュエリー法務相談室を主催する。新田・天野法律事務所、東京弁護士会所属。日本ジュエリー協会2級ジュエリーコーディネーター。慶應義塾大学法学部、東京大学法科大学院修了。
第484号(2020/3/25発行)5面