デジタルデータソリューション、「データー抽出依頼」スマホに残された最愛の息子との思い出
2020年04月08日
遺品整理ダイアリー Story7
思い出に寄りそって
遺品は故人の人生そのものであり、
残された者へのメッセージです。
遺品整理の現場から生まれた
ストーリーをお伝えします。
故人のスマホやパソコンなどのデジタル端末は「デジタル遺品」と呼ばれている。その中には写真や動画、アドレス帳、メールなどのほか、銀行口座や株式口座など金銭的な価値を持つものもあり、相続の場で問題になるケースが増えている。
1999年に設立された『デジタルデータソリューション(東京都中央区)』はデータトラブルのトータルソリューションカンパニーで、データ復旧では国内売上シェア11年連続ナンバーワンを誇る。2017年9月からデジタル遺品サービスも手がけており、これまでに1,200件以上の相談を受け、その内260件以上のデータ復元や調査解析を行ってきた。
「デジタル遺品の特徴は、故人が10代から40代のケースが70%以上で、事故や自死といった『突発的な死』により依頼されるケースが多いことです」と語るのはデータフォレンジック事業部の天野昇太事業部長。
天野事業部長が担当した案件で特に印象に残っているのが、東北地方に住む女性が息子のスマホデータの復旧を依頼してきたケースだ。
息子は二十歳前後の若さで、不慮の事故により突然死してしまった。遺品となったスマホは基盤が破損し、電源が入らなかった。
最愛の息子を突然失った女性は少しでも思い出になるものが欲しいと強く願っていた。その意を汲み、エンジニアが端末内のデータの抽出作業を実施。端末内の写真、動画、メール、ウェブ閲覧や発信・着信履歴などのデータ復旧に成功した。
この事例では機器から直接データを取り出したが、デジタル遺品の相談内容の約7割はパスワード解析だ。この半年で技術が進歩し、かなり高い確率で解析が可能になったという。
デジタル遺品の課題は、資産や遺産を多く保有している50代以上に、デジタル遺品の存在やサービスに関する認知度が低いことだ。
「家族の知らないネットバンキングや株式口座、仮想通貨などの取引がある場合、資産ならしっかり引き継ぎ、負債なら法的に対処する必要があります」と天野事業部長。同社はデジタル遺品の認知度向上のため、メディアや講演会などで情報発信も積極的に行なっている。
お客様が求めるものを明確にするよう心がけています
フォレンジック事業部 事業部長 天野昇太氏
デジタル機器に残る記録を収集・解析し、法的な証拠性を明らかにする調査手法「フォレンジック」を用いて、犯罪や不正行為など様々な問題の解決にあたるフォレンジック事業部を率いる天野氏。顧客対応で心がけているのは、「お客様が求めるものを明確にすること」。デジタル遺品では、自死した子供の労災の有無や、家族の金融資産の有無を確認したいといった依頼も多い。責任の重さを感じつつ、アドバイザー、カウンセラー、復旧エンジニア、カスタマーサポートからなるチームで解決にあたっている。
第484号(2020/3/25発行)19面