蔵屋、「接客の20か条」で楽しく仕事と向き合う
2020年04月18日
バイヤー道
~私の買取接客術~
前職は雑貨メーカーのグラフィックデザイナーという異色の経歴を持つ重栖健一さん。接客経験ほぼゼロで、一昨年より質預かりと買取りを行う『蔵屋(運営:リ・アンティーク・埼玉県蓮田市)』へ転職した。自ら作った"接客の20か条"を毎日読み上げ、相手を気にかける接客を心掛けている。
蔵屋(埼玉県蓮田市)スタッフ 重栖〔えすみ〕健一さん
雑貨のグラフィックデザイナーを10年経験。一昨年に転職。質や買取接客のほか、HPやチラシ制作も担う。同僚に似顔絵を描いて贈ることも
前職、雑貨のデザイナー
「水をつけてこするだけで汚れが落とせる、"あのスポンジ"で有名なメーカーにいました」(重栖さん)
美大を出てから、キッチンや洗濯用品などを作る上場メーカーでグラフィックデザイナーをしていた重栖さん。10年勤めたのち、色々な世界を知ろうとリユース業界に飛び込んだ。前職時代は、100円ショップに卸すような低単価の商品が中心だったが、今質や買取りの仕事を通じて扱うのは、ブランド品や貴金属品など高単価の物ばかり。
「自分が買わずとも、一流デザイナーが作った製品を間近で見られる面白みがあります」(重栖さん)
前職時代、接客経験はほぼゼロ。今の仕事に移り「感情がこもっていない、ロボットみたいな接客」と同僚に指摘され、"接客の20か条"を自ら編み出し、毎日開店前に独り唱えている。
接客の20か条
「常に意識すること」を表記
「◯◯◯します!」で緊張の意識なくなる
その1つが「(お客からの)そうそうそう!を増やす」。イエスセット法と呼ばれるトーク手法に近いもので、本命の質問にイエスと答えてもらえるよう、直前にイエスと答えられるような簡単な質問を重ね、最後に本命の質問でイエスと言ってもらうという運び方だ。買取接客では、査定金額に納得してもらうことがゴールとなる。重栖さんは例えば、「歩いていらっしゃったんですか」などと声を掛け、心を開かせてから査定している。
声に出して読み上げている20か条は、すべて「○○します!」と語尾を揃えている。これにより、「脳に自然と刷り込まれるし、××しなきゃという緊張の意識がなくなり、楽しく仕事と向き合えるようになった」と重栖さん。
つい先日には、閉店間際に飛び込んできた70代の女性客とのやりとりで、「人助けを実感」(重栖さん)。女性は疲れ切った様子で、手には家からかき集めてきたという指輪やピアスにイヤリングが。ただどれもノンブランドで、査定額は計1万円にも満たなかったが、女性は自分の予想を超えた金額に喜んでいた。話を聞くと、同じ日に他店も回ったが、断られてしまったのだという。ほんの15分の接客であったが、相手を気にかける接客が奏功し成約した。
第485号(2020/4/10発行)10面