たんす屋、コロナを乗り切るために自社でできることにエネルギーを
2020年05月08日
着物リサイクル春夏秋冬
第236回 緊急事態宣言
東京山喜(店名・たんす屋)中村 健一 社長
1954年9月京都生まれ。77年 カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学、79年 慶応義塾大学卒業。同年東京山喜入社、87年 取締役京都支店長、91年 常務、93年 社長に就任、今に至る。
コロナウイルスの難局を乗り切るために
自社でできることにエネルギーを集中
世界的なコロナウイルスの拡大が止まりません。この原稿を書いている4月5日時点で、日本に於いて未だ緊急事態宣言は発令されていませんが、現在の傾向を冷静に判断すれば、週明けに安倍首相が緊急事態宣言を発令すると予想されます。小池東京都知事、吉村大阪府知事が週末にとどまらず平日も外出自粛を要請し、東京、大阪がニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマと同様の状況に陥ってしまわない保証はどこにも無いと言わざるを得ない状況です。
前回のこのコラムでは、3月5日〜9日の5日間、有楽町の東京交通会館で開催されるたんす屋の創業祭を、延期か中止か強行かの判断を迷いながらも強行を決めた経緯を書かせていただきました。
結果は、強行して大正解でした。毎日多くの来場者に恵まれ、お越しいただいたお客様にはこの状況下よくぞ開催して頂けたと、感謝の言葉を多く頂戴しました。当然ながらコロナウイルスの影響はありましたが、売上は昨年対比92.5%で、半減もやむ無しの思いで開催した結果としては大健闘でした。しかしながらあれから1カ月が経過し状況は大きく変わってしまいました。
状況一変世界で感染拡大
先ずは東京オリンピックの延期決定が3月24日になされたことです。1カ月前には、まさかオリンピックを延期したり中止したりする事はありえないと思っていました。
次に3月23日にコロナウイルス感染が発覚した志村けんさんが、わずか6日後の29日に急逝されたニュースです。それまでは、コロナウイルスで亡くなる方たちの多くは80歳以上の既往症のある高齢者といったイメージでしたが、一気に身近な恐怖に激変しました。
更にコロナウイルス感染拡大の中心が、中国からヨーロッパそしてアメリカに急速なスピードで移行しています。現在(4月5日)全世界のコロナウイルス感染者数は、約119万人、死者数は6万4421人です。震源地中国は、感染者数約8万人、死者数3329人であるのに対しアメリカの感染者数約31万人、死者数8291人と感染者数で約4倍、死者数で2.5倍以上です。ヨーロッパ各国もスペインの感染者数約12.5万人、死者数1万1744人、イタリアの感染者数約12.5万人、死者数1万5362人、ドイツの感染者数約9.6万人、死者数1427人、フランスの感染者数約6.8万人、死者数7560人、イギリスの感染者数約4.1万人、死者数4313人とその数を急速に伸ばしています。つまり感染者数では、アメリカ以外にもスペイン、イタリア、ドイツ、フランスが中国を上回っています。
今後の日本
欧米を追うリスク
これらの数字を見てから日本の感染者数3271人、死者数70人を比較すると極めて少ない数字であることがわかります。感染者数は、千人単位で四捨五入をしましたから、同じ様に千人単位で四捨五入をすれば日本の感染者数は0.3万人になりますし、死者数でもイタリアのわずか0.5%です。
この現状を、日本のコロナウイルス対策が効果的に機能して、中国や欧米と比較して圧倒的に成果を上げている結果である、と安心して言えるでしょうか。もしそうであれば、素晴らしいことですし、これ以上の経済的負担も心配不要です。
しかし、本日(4月5日)東京都で新たに143人が感染していることが判明しました。1日の感染者数としては最多を更新し、東京都で1000人以上が感染したことになりました。
このトレンドを冷静に判断するならば、これから日本は欧米が経験している感染拡大を辿るリスクが少なからず存在していると言わざるを得ない状況です。
社内で緊急事態宣言発令
たんす屋HPより
私は社長として、4月6日に社内で緊急事態宣言を発令する覚悟を決めました。理由は明らかで、弊社にとって緊急事態に突入したと言わざるを得ない状況だからです。この週末も、たんす屋が出店している多くの商業施設が臨時休業を決定し、たんす屋も休業を余儀なくされています。又、頑張って営業している店舗も、来場客数の極端な減少で売上を大きく落としています。更には、4月13日まで東武百貨店池袋店で開催を予定しております「たんす屋祭り」や同じく4月末に小田急百貨店新宿店で開催が予定されている大型催事も開催そのものが危ぶまれてきています。そして5月の、年間最大規模の「大決算エキサイティングバザール」(会場:天満橋OMM、東京交通会館)ですら、開催すべきか否かの判断を迫られています。
現在自社で出来ることと、自社ではコントロール不可能なこと。これを明確に切り分けて、持てるエネルギーの全てを自社で出来ることに集中して、この難局を切り抜ける為に全力で対応して行く所存です。
2000年から始まりました本連載ですが、今回の未曾有の事態に立ち向かう為、筆を置かせて頂きます。長きにわたりご愛読頂きありがとうございました。
※本文中の催事についてはすべて中止になりました。
第486号(2020/4/25発行)18面