再生の「技術力」を可視化、安心で選ばれる会社に
休業か営業かを迫られた4〜5月、中古工具店を展開するアクト(東京都豊島区)は、混み合う時間帯に店舗を閉めた代わりに商品再生に集中した。出荷量を増やし、普段は売りづらいモノを生産しDIY需要も取り込んだ。この時期に大きく売上・利益を落とす企業が多かった中、同社の売上はほぼ昨年並みで、粗利は2割増。伊藤啓介社長に話を聞いた。
自粛下の売上、昨年並み粗利は2割増
── 緊急事態宣言が出された頃、企業は店舗を営業するか休業するかの判断を迫られました。御社はこの時期、どんな状況でしたか。
伊藤 当時は営業しないことが最も感染リスクがないことだとは認識しつつも、会社として従業員やお客様のことを考えた時に、単純に休むというのには少し違和感がありました。じゃあ営業の時間帯を見直そうかということで、敢えて一番お客様が混み合う時間帯の18時〜19時30分をクローズすることを決めました。代わりにその1時間半、商品の「生産」に充てました。要は営業時間が短くても豊富に商品を提供できれば、売上も立つし従業員にきちんと給与だって支払うことができる。この取り組みを6月に入るまで、実行していったんです。
── 接客や販売ができる時間の縮小は仕方ないとして、代わりに、買い取った工具の商品化に時間をいつも以上に割いたと。
伊藤 当社では生産と呼んでいて、店舗で買い取った商品の修理やクリーニングというのは通常、接客をやりながらの業務です。量もある中で常に生産がやりきれない状態で、古かったり特殊だったりして売りにくそうなモノは生産が後回しになりがちでした。ただ、1時間半早くクローズしてから、今まで後回しになるようなモノも生産できるような勢いがついた。すると普段は売れないモノが売れたり、当社はプロ向けの工具を職人に販売していますが、5月になると自宅でのDIYなのか、一般の方の来客が増えた。使い古された安いメジャーや丸ノコなどがバーッと売れていた印象です。
第497号(2020/10/10発行)9面