古い町並みで保存地区に指定されている寺内町にあるポクー・レコード(大阪府富田林市)は、普段は機械製造業者で会社勤めをする西川裕加子さんが運営する古物店だ。自身で店の改築をほとんど手掛けたため、開業に際してかかった初期費用が、たったの40万円だった。週末起業の秘訣を聞いた。
平日は会社員、週末古物商
初期費用40万で開業
古着は中年女性がよく買う
独学でDIY
「よくある開業マニュアルには自己資金100万円と銀行からの融資がそれぞれ必要などと書かれている。でもそれは避けたかった」と西川さんは話す。初期経費は、店舗改装費や一年の改装期間の家賃も含めて約40万円。費用を抑える代わりに、肉体的な労力を費やした。ロフトの設置、床板の張り替え、棚・ケースの作製、漆喰塗り......。すべて自身でやった。DIY経験はほぼ皆無だったが、工具は知人から調達し、YouTubeを見て独学で覚えたという。業者に頼ったのは電気の配線のみ。1年という長期の改装期間を設けることで、別に本業がありながらも無理なく行程は進んだ。店は老朽化した長屋だったため、家賃は非常に低く抑えられた。
- レコードは寄付で集まることが多い
- 古書も扱う
副業は癒やし
副業の利点について「本業の仕事の疲れを副業で癒せること」だ。西川さんはリサイクルショップや骨董店やフリマなどに昔から愛着があり、古物の業務は「趣味の延長」だと話す。また、設計担当の仕事がもっぱらデスクワークのため、体を動かすことの多い古物商は気分転換にもなる。一方で、本業と副業を合わせると月に1日程度しか休みが取れず「ヘアカットに行けない」なんてことも。多忙でも継続できる理由を問うと「自宅と店舗と本業の職場が、全部近所にあるから」。こういう時代だからこそ、ミニマムな行動圏が必要とされているかもしれない。
第527号(2022/1/10発行)19面