東京・御徒町の一角に、創業7年で100億円まで業績を伸ばした企業がある。色石(カラードストーン)を主力商材に、買取・加工・販売までを手掛ける貴瞬(東京都台東区)がそれだ。国内・海外へ販路を拡大するとともに、独自の研修で人材育成することで急成長を遂げてきた。その経営エッセンスを、辻社長を直撃し訊いた。
「色石」再生で100億企業へ成長
宝石査定「修行10年」を
独自の研修で「半年」に
貴瞬
辻 瞬社長
二束三文の色石たち
一気通貫で再生・再販
── 独立前は宝飾の小売販売をされていたようですね。
辻 はい、もともと小さな宝飾の小売店に在籍しておりました。そのとき、買取店さんにお伺いする機会があって。昔の買取店では、色石をすべて枠から外して、捨てていたんですよ。どのお店も似たような状況だったんです。それこそご主人から何十年か前に100万円で買ってもらったサファイアが、80代になって売りに行くと、5万円ほどで査定されてしまうんですね。当然、がっかりした顔をされます。
── なぜ買取価格が二束三文に?
辻 ネックだったのは、色石の鑑別が大変難しかったことです。本物だとしても、石は使っていると欠けたり、汚れたり、傷がついたりします。販売した宝飾店自身がいくらで買い取れるかの鑑定ができなかったのです。自分も値段がつくのは分かっていたのですが、当時の質店や買取店でも鑑定・鑑別できる人は非常に少なかった。それに、知識があっても売れるという確信がないと買えない。それで、買取対象にならず、色石は二束三文というイメージがついてしまったんじゃないでしょうか。
── そこに着目をされたわけですか。
辻 はい。我々が買い取ることで、買取店でお客さまによりよい買取額を提案しやすくなります。バブル期に宝飾業界で仕入れてきた数兆円の希少価値の高いジュエリーが、東日本大震災などを契機に日本人の価値観が変わり、不要なものとして都市鉱山の一角となりました。この都市鉱山の開拓を、ビジネスとしてやってみるのは社会の役に立ちますし、面白いんじゃないかと。
第541号(2022/8/10発行)9面