KITAZAWA DISPLAY BOOKS(東京都千代田区)
KITAZAWA DISPLAY BOOKS、装飾としての洋書の魅力《第195回》
店舗は2階。螺旋階段を上がると、ブリティッシュグリーンの色彩がクラシカルな入り口がある
十数年間、服飾業界で売り場作りを担うVMD(ビジュアル・マーチャンダイザー)として活躍。退職後、3年前、実家である北澤書店にて「KITAZAWA DISPLAY BOOKS」をスタート。前職で培った知識とセンスで、百貨店やモデルルームのディスプレイをコーディネイトしている。「洋書を楽しむきっかけとなるよう、ディスプレイ用でも質の良いものをご提案しています」
4代目女性店主が発信
装飾としての洋書の魅力
洋書をディスプレイ用に販売している店舗は他にもあるが、KITAZAWA DISPLAY BOOKSの強みは、洋書専門店ならではのノウハウを活かし、本の中身までは吟味した提案ができることだ。
「結婚式でチャペルなどに置く場合、バイブルという文字が入るとウェディングらしくなりますね。一方、カジュアルなカフェに極端に宗教色の強い内容の本が置かれてしまうと、日本人のお客様は分からなくても、外国人のお客様には違和感があるかもしれません。そうしたミスマッチが起こらないように提案できるのが、当店の強みだと思います」と北澤里佳さん。
アンティーク風の空間にか革装の年代の古い本を、ホテルのようなスタイリッシュな空間には現代のモダンな装幀の本をと、多様なニーズに応えられるのも専門店ならでは。北澤さんが現場に行って、ディスプレイすることもある。
現在ディスプレイ用の本の購入者はインテリアコーディネーターや空間デザイナーなどの業者と個人の利用が約半々。個人では約3割が外国人と海外からのお客だ。価格はハードカバーで1冊400円からあり、良く売れるのは900円のものだ。昨年11月のリニューアルでは格式ある従来の雰囲気は残しつつ、気軽に入ってもらえる工夫も凝らした。
アートやファッション、日本に関する本、児童書などのコーナーを新しく設置。親しみやすい内容の本を平積みにし、本棚の上の方ほど研究書に近いものになるようにした。今後は「インテリア、デザインのイベントや、装飾に関連するワークショップなど、この空間を楽しんでもらえる企画を考えたい」と北澤さんは話している。
ファッションのコーナーでは、シャネルの本を平積みにするなど、キャッチーな棚作りをしている
リニューアルにあたり什器は敢えて1982年に店舗を建て替えた当時のものをそのまま使った。また、証明はスポットライトにし、明るさにコントラストが付くようにした。カーペットも明るいベージュ色に変更。古書店というよりも、書斎に近いイメージに仕上げた
この通路の書棚はディスプレイ用の本のコーナー。選びやすいように、カラフルな色のもの、黒、革装など装幀の色や種類で分けている(下写真)
靖国通りが一望できる窓際には、テーブルとイス4客を設置。お客はここでゆったりと本を見ることができる
綺麗な挿絵の入ったページだけを切り出し、単体でも販売
ハードカバー以外にもペーパーバックや現代の洋書などを幅広く取り揃えている
外国からの観光客向けに、新しく入り口近くに日本に関する洋書コーナーを作った
奥のスペースでも、座って本を読める
カウンターはスタイリッシュに新調。座っているのは、三代目で北澤里佳さんの父・北澤一郎さん
洋書と一緒だと、オシャレ感アップ!
北澤さんは、アクセサリーや花などを撮影する時の小道具として洋書を使うことを提案。「外国語の本や新聞を使うだけでも、とてもオシャレに演出することができます」と北澤さん。近年ではSNS映えアイテムとして気軽に購入される方も多いと話す
昨年8月から10月まで、千代田区立図書館で、北澤さんプロデュースによる展示会【DISPLAY BOOKS~新しい洋書の楽しみ方~】も行われた。装幀や挿画が美しい本を集めたケース内展示に加え、パネル展示でも洋書を使ったディスプレイを紹介した
オープン | 2015年に北澤書店と併設する形でKITAZAWA DISPLAY BOOKSを開店。2018年11月にリニューアルした。 |
---|---|
取扱い商品 | 洋古書 |
スタッフ数 | 3人 |
備考 | 店舗面積/128平方メートル 店舗在庫/約2万点 北澤書店は1902年(明治35年)創業の英米文字を中心とした人文科学系洋書の専門古書店。1982年4月に自社ビルを竣工。現在1階は撤退し、2階のみで営業を行う。 |
第458号(2019/02/25発行)13面