古書店主に、思い出に残っている一冊を紹介してもらうリレー連載。第四十回目は、古本天国ノペリ書店の志賀桂亮さんの紹介で、書肆とけい草の秋山和毅さんが登場する。
固定観念から解放してくれた
デリダ
脱構築
高橋哲哉/著
講談社
私の思い出の一冊は、フランスの哲学者、ジャック・デリダの半生や思想について書かれた「デリダ 脱構築」。法学部生だった大学2年の時に読んだデリダの入門書です。
彼の「脱構築」という考えは、ざっくり言うと「善悪、真偽、美醜」といった二項対立を疑い、解釈し直すといったものです。絶対的な正義も悪もなく、正義と悪は混ざりあっている。私はかつて引きこもり少年でかなり自己否定的でしたが、このような思想に触れたことで「正しい」「間違っている」というような価値観に過剰に囚われなくなりました。
第596号(2024/11/25発行)23面