《ブランド市場バイヤーに学べ43》 様変わりする古物市場トレンド
2018年04月05日
第43回 様変わりする古物市場トレンド
昨年12月のコラムで「古物業界のトレンドが変わりつつある」というお話をしましたが、時代の流れの速さをますます感じるニュースの見出しが目に飛び込んできました。
『俳優の山田孝之さんが「一日受付をする」権利が2,700万円で落札!』山田さんが取締役を務める会社が行っているライブコマース事業の初回結果だそうです。「スマホアプリによるライブオークション」で、モノではなくコンテンツを提供し、なおかつこれだけの高額落札となることに驚きました(もちろん、彼の知名度があればこそですが)。
ブランド古物業界でもアプリによるライブオークションは数社実施されていますが、今後はさらに拡大していくのでしょうね。アプリに限らず、いまは大会の下見や落札結果をWeb上で自由に見られるサービスが一般的になってきました。市場の形はどんどん様変わりしていくのだと思うと、ワクワクする反面、ちょっと寂しい気もします。
消える習慣、「情報共有」の新時代
時代に合わせて古物市場がアップデートされていく中で、消えていった言葉や慣習がありました。
例えば、昔は古物市場で卸売りを専業としている業者さんを「ハタシ」と呼んでいました。小売りはせずBtoBで数を売って稼ぐやり方で、下見中もほぼすべての商品を見て、とにかくたくさん買っていきます。昔の古物市場では小売り業者さんは少なく、ハタシの方が主流でした。最近は小売り業者さんが古物市場に参加することも多くなったためか、ハタシという呼び方はされなくなりましたね。
「テコリ」も最近はめっきり聞かなくなりました。これはざっくりいうと〝自作自演〟のこと。自社の出品物の値段を吊り上げるために、わざと声を上げるんですが、一歩間違えると自分で落札して「ドボン」する可能性もあります。相場と競りの盛り上がり具合を見極めないといけないので、意外と難しい。テコられたかそうじゃないか気付けるのは、誰が何を出品しているかおおよそ把握している古参の方々だけ。テコリに関しては、今はどの市場でもNGにしているのではないでしょうか(当社主催のRKグローバルオークションでは厳重注意です!)。
おこづかいがもらえる「二番」も、最近古物市場に参加された人には聞き覚えのない制度ではないでしょうか。昔の市場では、落札した人の次=二番目に高い金額を言った人に、その商品の落札金額の1%程度のおこづかいをあげていました。競りの盛り上がりに一役買ってくれるわけです。今でもやっている市場はほとんど見かけませんが、噂ではまだ二番制度が残っているところもあるそうですよ。
これらはWebが普及して、商品や相場が誰でも分かるようになるにつれて廃れていきました。恩恵がある一方、皆同じ情報を共有するようになったことで、相場が均質化しています。一昔前のように、バイヤー個人の感覚や知識で競り合っていた時代より、ビジネスの厳しさは増しているように感じます。「便利な時代になった」と喜びながらも、トレンドに対する嗅覚をもっと尖らせなきゃなと、自分を戒める今日この頃です。
齋藤 清(さいとう きよし)
株式会社アールケイエンタープライズ・執行役員 兼 オークション事業本部 本部長
グローバルトレードと共催する「RKグローバルオークション」のオークショニアを務めるとともに、日本国内はもとより海外でも買い付けを行う敏腕バイヤー。ブランド品リユース業界歴は20年余り。ゴルフとお酒を愛する憎めない人柄で、業界関係者との人脈も深い。
第436号(2018/03/25発行)16面