《バイヤー道~私の買取接客術~》藍澤和博店長、配偶者の死別案件、親身な接客で信頼向上
2018年12月17日
バイヤー道
~私の買取接客術~
ネオスタンダード白山店
藍澤和博店長
NEO-STANDARDが運営する買取専門店の「ネオスタンダード」白山店(東京都文京区)。40~60代を中心に来客がある同店では時折、配偶者を亡くした夫・妻が遺品を持ち込んでくる。そんな時、藍澤和博店長はどのようにして相手の心に踏み込むのか。原宿店で勤務していた頃の体験談と合わせ、接客術について直撃した。
相手を不快にさせず、家族の死に踏み込むコツ
持ち込まれた「遺品」を通じて、故人について柔らかな物腰で聞いてみる
...抵抗なく話す人ならば、"話を聞いてくれる店員"と思ってもらえ、信頼度が高まり成約する可能性はアップ
遺品の店頭買取は出張買取に繋がるチャンス
若者で賑わう竹下通り。かつて原宿店に勤めていた頃 、藍澤店長の元に如何にも身なりの怪しげな80代男性がやって来た。「これって何なんだろう」。そう話す男性の手にはシャネルのバッグが1つ。同店長は"明らかに自身の物ではない"といぶかりながら男性を席に案内 。物腰柔らかな口調で購入時期や場所について尋ねた。
詳しいことは何も知らない。そんな男性が語ったのは「自分が家一軒丸ごと片付けることに...」だった。
別居中だった妻の突然死に遭ったという 。家中の物を片付けねばと、偶然手前にあったバッグを持ってきたのだった。同店長はバッグの買取りを成約させると、奥さんが他にもブランド品を持っていたのでは ?と聞いた。ただ男性は物の価値を詳しく知らなかったのか、ブランド類の遺品については語らず、「とにかく大きな家電を片付けたい」と相談。
後日家へ訪問すると家電以外に宝石や時計などまさに宝の山。家中足の踏み場が無く、5回に渡って買取りを行う程の、大口案件となったのだ。
一人暮らしの高齢者
会話相手は自分だけかも
「何店か見てから決めようと思いましたが、ここに決めました」。そう語ったのは"夫との記念の"「余市」を持ち込んだ60代の女性客。ウイスキー好きだった夫が生前、ニッカから北海道の工場に招待され製造したというお酒のようだ。実際には夫が自身の体調を考慮し、妻であるその女性に蒸留体験をさせ、10年の熟成を経て北海道まで取りに行かせたという。
買取額は5万円。お酒としては比較的高い値段でもなかったが、親身になって夫との思い出話を弾ませてくれた藍澤店長に、女性は満足した様子だったという。「例えば一人暮らしの高齢者なら、今日まともに会話するのが自分だけになるかもしれない。そう思いながら、接客にあたっています」(同店長)
PCをいじる姿は美しくない
藍澤店長が重視するのは対面接客。"自分の私物を査定してくれる"ことにワクワクするお客がいるといい、査定は必ずお客の前で行う。ほとんどの場合は必ずルーペを使用。バッグやジュエリー、お酒のラベルを見る時でも欠かさない。「パソコンをいじる姿は美しいものではない。いじるとしても時間配分を考える。目の前で査定することがおもてなしと考えています」(同店長)
第453号(2018/12/10発行)11面