《トップINTER VIEW》マーケットエンタープライズ 小林 泰士社長、買取比較サイト「おいくら」譲受
2019年02月24日
ネット買取の死角を加盟店が解決
社長プロフィール
1981年3月2日生まれ、埼玉県川越市出身。株式会社マーケットエンタープライズ代表取締役社長。大学卒業後、ベンチャー企業を経て独立起業する。2006年、株式会社マーケットエンタープライズを設立し、現職。2015年6月には東京証券取引所 マザーズ上場。中核事業のネット型リユースのみならず、宅配レンタルや通信など事業の多角化を進めている。
ネット型リユース事業を展開するマーケットエンタープライズ(東京都中央区)が12月、買取価格比較サイトのおいくらをプロトコーポレーションから事業譲受した。ネットだけで対応できない依頼をリアル店舗にマッチングすることにより、顧客満足度向上を図るのが狙いだという。
対応できない依頼
おいくらと解決
--おいくら事業について、改めて教えてください。
小林 おいくらは、消費者と全国のリユースショップをマッチングするメディアで、不用品の買取り価格を一括比較できるサイトです。現在1400の加盟店様があり、月間1万2000件の買取り依頼がきています。
--事業譲受において魅力的だったのはおいくらの豊富な査定依頼でしょうか。
小林 いえ、おいくら事業の1400の加盟店の皆様と協力できれば、消費者の課題をもっと解決できると思ったのがきっかけです。私たちが課題に感じているのが、せっかく弊社に買取りのご依頼を頂いて、かつその商品が再販価値の高いものであっても、キャパシティの関係で対応できないことがあるということです。
--対応できない依頼とは。
小林 まずわかりやすいのが弊社の拠点がなく、対応できない地域からの依頼です。現在10拠点ありますが、これからもセンターを開設していくのは難しいと考えられる地域からの依頼もたくさんあります。あとは時間的、商材的にネット型リユースに適さない依頼です。
--具体的にどんな依頼ですか。
小林 時間的というのは、引っ越しのためにすぐ(買取りに)来てほしいなどのニーズがあるものの、キャパシティ的に難しい依頼です。商材的というのは、サイズが大きいものなど。わかりやすい例を出すと、冷蔵庫が店頭だったら5000円で売れる場合でも、ネット販売だと送料だけで6000円かかってしまうケースもあります。
--なるほど。
小林 こういった依頼に応えきれていないのが実情です。リユースの機運が高まる中で、ネット型リユースに注目が集まりがちです。しかし、ネットの企業だからこそできない部分というのは間違いなく存在し続ける。その部分で他の事業者様と協力することで、今までリーチできなかったところもより便利に安心して活用してもらえるようなマーケット作りをしたいと考えています。
「がっかり体験」減らし顧客満足度向上を
--御社で対応が難しい案件をおいくらに送客するわけですね。そういった依頼はどれくらいありますか。
小林 マーケットエンタープライズでは全体で月間4万件ほど買取り依頼をいただいています。そのうち、おいくら事業に送客した方がいいのではないか、その方が満足度が上がるのではないか、という依頼が1万5000件ぐらいあります。これをおいくらの加盟店の皆様とマッチングすることで、顧客満足度が向上するのではないかと考えています。
--顧客満足度の向上とは例えばどんなことでしょう。
小林 「買取りは来週だとうちにきてくれないんだ」とか「この商品は買い取ってもらえないんだ」といったがっかり体験を減らせると考えています。加盟店の皆様にとっても、これまで以上に優良な依頼がくる状態を作れる。かつ、弊社への依頼は高単価なものが多いです。現状おいくらにきている依頼と同等もしくはそれ以上の依頼が送客できると思っています。加盟店の皆様の方からは「いい依頼が増えたね」と、お客様の方からは「高く売れるドットコムでは難しいようだけど、一緒にやっているおいくらなら対応してもらえる」という形にしていけばうまくマッチングできて相乗効果を生み出せるのではないかと考えています。
ネットとリアル住み分け進む
--御社の拠点がない地域での送客が中心になりそうですか。
小林 わかりやすいのが現在ある10拠点以外の地域からの依頼です。しかし、地方にしか恩恵がないかというとそういうことではない。実際、依頼の分布としては人口に比例しているので首都圏の方にもアプローチできます。物流コストが見合わない商材などは地産地消のような形にしていければいいと思っています。
--拠点のある地域だと競合が生じるのではと考えていました。
小林 リユース業界って全部が競合している訳ではないと思います。10円で買取りして100円で販売する古
本のビジネスがあれば、500~1500円で仕入れて3000円で売る洋服や雑貨を中心としたビジネスもある。
私どもは1品あたり平均2万8000円のネット通販で商品を売っているので、どうしても店頭販売向けの商材は苦手なものもあります。そういった意味ではうまく住み分けできていくのではないかと考えています。
--御社とおいくら事業でどう住み分けていきますか。
小林 ネット向きでない商材であっても、リアル店舗や古物市場であれば売れるケースも多い。ネットとリアルそれぞれが、マッチしない依頼を消費者から受け取っているのがリユース業者の現状であり課題だと思っています。おいくら事業の1400店の加盟店の皆様と協力できれば、消費者の課題をもっと解決できる。そこをマッチングできる仕組みにしていきたいです。
--おいくら事業の今後の展開を教えてください。
小林 今年の夏までにはおいくら事業に弊社の依頼を送客できる仕組みを作りたいと思っています。わかりやすく依頼が増えるので、そこをどうマッチングさせていくかも検討していく。その上で加盟店の皆様を増やすなど、これまで以上に満足度を向上させていく施策を考えていきたいですね。
--リユース業界の今後はどう見ますか。
小林 「再販価値があるからこの商品を買おう」というような、「賢い消費」がこれからも進んでいくと思います。リユースのマーケットはポテンシャルを秘めています。一方でそうした高価なものだけでなく、日用品などでリユースショップを活用するのもごくごく当たり前になっていくと思います。フリマアプリやネットオークションなどのネットの需要もますます上がっていくと思いますが、それだけでは確立できないマーケットは間違いなく残り続けます。そういった需要も、おいくら事業を通じてマッチング度を上げていきたいと思ってます。
会社データ
商号 株式会社マーケットエンタープライズ
設立 2006年7月
資本金 3億535万3,000円(2018年6月末時点)
上場市場 東証マザーズ(証券コード:3135)
事業内容 ネット型リユース事業
従業員数 284名(アルバイトスタッフ含む)※2018年6月末時点
東京本社 東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル3F
第457号(2019/02/10発行)7面