<MARKET Trend>リユース業界に再編の波 フリマアプリの脅威が招く3つの将来不安
2019年05月09日
リユース業界に再編の波が押し寄せている。背景にはフリマアプリ市場の拡大を起点としたマーケットの急速な変化があると見られる。国内市場は拡大傾向にあるものの、BtoC分野においては成熟期を迎えており、今後も再編が進むことになりそうだ。売り買い双方の思惑を考察する。
増える借入金 保証負担重く
4月8日、衝撃的なニュースが業界を駆け巡った。リユース業界最大手のゲオが中古ブランド品を扱う有力企業「おお蔵」を買収すると発表した。「確実にリユース業界の再編は進んでいる」とあるリユース企業経営者は確信する。5年間のリユース企業に関するM&Aをまとめた下記の表を見れば分かるように、年々案件が増えていることが分かる。売り手が増える背景には、市場の急速な変化から来る将来不安がありそうだ。
その要因の1つが「収益性の悪化」だ。リーマンショック以降、全国に買取店が展開されるようになり、買取の競争が激化。収益性が悪化する中、フリマアプリが登場し一気に取扱高を拡大。影響を受ける事業者も少なくない。2つ目の要因は、「借入金」だ。中古品売買は現金取引が基本とは言え、資金繰りにおいて借入を行っている事業者は多い。事業規模の拡大とともに増えた多額の借入金に対する経営者保証の問題が不安を増幅させている。そして3つ目が「事業承継」だ。2つ目の要因として挙げた借入金を含めて引き継いでくれる人選は容易ではない。そのため、利益が出ており買い手がいるうちに売却を決断するケースが多いようだ。
▲リユース企業の主なM&A
参入・商材強化の"時間"を買う
一方で、買い手側の思惑は何か。買収企業は、異業種企業とリユース企業の2つに分かれる。メルカリの拡大により、世間のリユース市場に対する見方は大きく変わった。そのため、リユースを成長マーケットと捉え、参入のために買収するケースが見られる。また、リユース企業による買収で多くみられる のは、手薄な商材の強化だ。有力企業においては、取扱い商材を広げる総合化が進む中、人材やノウハウ習得にかかる時間を買う狙いがあるようだ。同一の中古商材を扱う企業によるM&Aもあるが、異なる営業拠点や顧客基盤等が魅力となっているケースが多い。
中古品売買の事業は、1点物を扱う関係から仕入れにおいてスケールメリットが新品市場に比べて効きにくい。そのため、規模の大きい企業が比例して高く買えるわけではない。このことが、これまで再編が起きにくかった要因の1つだった。しかし、マーケットは大きな転換期を迎え、次のステージに向かっている。
リユース業界も例外ではなくM&Aに限らず、異業種や同業種の提携・連携等が加速していきそうだ。
第462号(2019/04/25発行)20面