《リユース探偵》免許返納増加でブーム到来か 中古シニアカーは宝の山?
2019年09月04日
・中古シニアカー市場に潜在需要
・免許いらずの簡単操作で高齢者の足として期待高まる
・高齢者事故多発を受け家族の賛成意見が増加
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免許返納増加でブーム到来か
中古シニアカーは宝の山?
近頃、急激に注目を集める商材がある。その名も「シニアカー」。一人乗りの4輪電動カートのことだ。
4月に起きた東池袋の交通事故が大きく報道されたことで、高齢者の運転を危険視する風潮が強まったのは間違いない。実際、事故直後の5月に都内で免許返納した人の数は、過去最多を記録した。
車を手放した高齢者の受け皿として期待されるシニアカー。しかし「中古」では需要が高まっているのか?調査してみた。
免許不要の歩行者扱い
簡単な操作で乗車可能
シニアカーが高齢者の「足」として期待される理由は、主に2つ。
まず1つ目は、免許が不要な点だ。一見シニアカーは自転車扱いされがちだが、道路交通法上では歩行者と同等扱いとなる。
2つ目は操作が簡単なこと。例えば、シニアカーのレンタル業でトップシェアを誇るセリオ(静岡県浜松市)が取り扱う「遊歩スマイル」に必要な操作は、電源を入れてアクセルレバーを握るだけ。レバーを握ると車体は進み、放すと止まる。前進・後進と、走行速度は各ダイヤルで切り替え可能。連続走行距離は30㎞で、コードを家庭用コンセントに差し込めば充電できる。
事故後に売上4倍の店も
家族の賛成意見増える
さて、肝心の「高齢者の事故多発で中古シニアカーの販売台数が増えたか」という点だが、これは議論の余地がありそうだ。
「出張買取24時」を手掛けるNORTH VILLAGE(埼玉県さいたま市)の松井次郎取締役は「シニアカーの買取実績は緩やかに伸びているものの、それがHPのPV数上昇に応じているのか、市場の拡大に伴っているのかは不明です」と話す。
昨年から中古販売事業に本格参入したセリオモビリティショップ東京中央の田渕政之所長も「近年当社の業績は右肩上がりに伸びており、今年の事故報道だけが要因とは一概に言えません」と慎重な意見。ただ、「問合せ数は春過ぎ頃から確実に増えています」とも話し、注目度の高まりを感じているという。
中古シニアカーの買取販売専門店であるトーケイモータース(静岡県浜松市)は、東池袋事故後にあたる5月の売上高が、前月比4倍に跳ね上がったことを明かした。
同社の中山さと子氏は「これまで、来店客の約3割は『乗りたくない本人と事故が心配な家族』や『乗りたい本人と、運動減を懸念し乗らせたくない家族』など、家族内で意見の対立がありました。しかし、近頃の高齢者事故多発を受け、本人・家族双方が『周りに迷惑を掛けてはいけない』と意見が一致しやすくなったようです」と話す。
潜在需要は底知れず
安全指導通じて普及を
シニアカー普及に伴い、危険な乗り方をする高齢者が槍玉に挙がることもしばしば。十分な指導が無いままCtoCフリマアプリなどで中古車が売買され、危険運転を生み出している可能性も指摘されている。
そんな人的ミスを防ぐために、セリオが力を入れるのは「安全指導」だ。中古車販売時、使用者の自宅などから目的地までの走行ルートに指導員が同行し、交通ルールなどを説明する。「例えばスーパーや病院といった日々の目的地まで付き添い、道の危険性やシニアカー走行時のルートを専門的見地から指導します」(田渕所長)
今後更なるシニアカー普及には、正しい乗り方と、シニアカーそのものの周知が重要だとセリオの田熊教昭所長は話す。
「住民が一人でもシニアカーに乗り出すと、それを見た地域の方が次々と乗り出す現象はよく起こります。新品では40万円以上するものもありますが、中古では半額の商品もあり、入手しやすい。中古市場の潜在需要はかなりあるのでは」(田熊所長)
第470号(2019/08/25発行)12面