キャッシュレス決済の普及で変わる買取市場
2019年11月09日
キャッシュレス決済普及に向けた大々的なキャンペーンが展開される中、リユース業界ではキャッシュレスによる買取の動きが目立ち始めている。既に主要なフリマアプリでは売上金の受取りで利用できるようになっており、将来的には買取の市場に大きな影響を与える可能性を秘めている。
楽天はポイントで受け取れるサービスを提供
ビックカメラは2割が利用
ビックカメラは今年7月から「ビック買取マネー」を開始した。買取窓口を設けるグループの店舗で買取代金を現金の代わりに電子マネーで受け取ることができる。その後の進捗を取材したところ、グループの買取の18%を占めると言う。当初は15%を見込んでいたため、想定を上回る利用率だ。
子会社のソフマップでは従来から電子マネーで受け取れたが、利用が同社内に限られていたため、8%に留まっていた。
「グループのお客さんの利用につながっている」(ソフマップ︰渡辺武志社長)とその効果を話す。利用範囲がグループ全体に広がり、各店での販促に活かせることから積極的な案内にもつながっているようだ。
楽天でも今年7月から、楽天スーパーポイントで受け取れるサービスを開始。現金の場合1%のところ、5%を買取額に上乗せして受け取ることができる。「新規のユーザーが取れており、手応えは悪くない。少額の買取需要をポイントで取れれば。まだ未対応の店舗もあるため導入率を上げていきたい」(重田紘範マネージャー)と話す。
ZOZOでは、これまで行っていた「買い替え割」を進化させた「いつでも買い替え割」を開始した。ZOZOTOWNで過去に購入した商品の中からポイントと交換したい商品を選択すると、その場でポイントに交換できる。
これまでは、商品の購入時に下取り価格として割引に利用できるものだったが、購入に関わらずポイントに交換できるようになった。商品は後日届く送付用バッグに入れて返送する。モノが届く前にポイントに交換できる点は、即時買取サービスに近い。現金で買い取った場合は、一度振り込んだ現金を返金してもらうのは難しいが、ポイントであれば企業側でコントロールすることができるため、先払いするリスクを抑えることができそうだ。
ZOZOがヤフーの傘下に入ったことでキャッシュレス決済「PayPay」との連携も進むと思われる。将来的には、下取り品のポイントをPayPayにチャージできるといったことも考えられなくもない。
ZOZOは下取り品をポイントに交換できる
フリマアプリはキャッシュレス戦争
そういった意味では、既にフリマアプリでは、キャッシュレス決済と買取の連携が先行している。メルカリではメルペイで、楽天のラクマでは楽天ペイ、新たに始まったPayPayフリマでもPayPayでユーザーは販売による売上金を受け取れる。これを買取金と捉えれば、既にキャッシュレスで買取金を受け取っているようなものだ。
キャッシュレス決済の競争は独自の経済圏の競争でもあるため、その波が買取市場にも訪れることになりそうだ。リユース企業でもこれらの決済導入店は増えており、今後チャージ機能が開放されれば、キャッシュレス買取が一気に広がる可能性もある。
中小規模店が独自にポイント等で始めるには、利用範囲等が限定されユーザーメリットが薄い点がネックとなるが、さまざまなキャッシュレス決済にチャージできるようになれば、中小規模のリユース店の買取でも導入しやすくなる。少額の買取を中心に現金にこだわらない層が増える可能性もある。また企業にとっても買取時に現金が流出しない点はメリットが大きい。キャッシュレス決済の普及は、将来的にキャッシュレス買取への普及につながると捉えておいた方が良さそうだ。
フリマアプリとキャッシュレス決済
第474号(2019/10/25発行)20面