お客のために古書を選んで宅配
コロナで新たな販売手法広がる
コロナの打撃を受けて古書店の販売方法が転機を迎えている。従来の対面販売やEC販売ではない第三の選択肢として「選書宅配サービス」が注目されつつある。スタッフが客の好みや要望をヒアリングした上で古書を選んで宅配する、付加価値で勝負するものだ。実施した2つの古書店から話を聞いた。
手書きの告知文がツイッターで拡散された
2か月半で注文100件超フォロワー1000人増
ヤングアダルトジャンルに特化した古書店大吉堂(大阪府大阪市)は4月半ばから6月末の期間限定で選書宅配サービス「福袋」を実施し、注文件数は100件を超えた。同店は4月の緊急事態宣言を受けて販路の在り方を考えていたところ、某新刊書店が選書宅配サービスをしていることを知って導入を決めた。福袋の特徴はお客の好みを聞くのではなく敢えて嫌いなものを聞くことだ。お客から「NGワード3つ」を吸い上げ、該当しない古書を文庫2冊とハードカバー1冊の計三冊を送った。他社の同様の取組と差別化が図れた上に、古書を選ぶ際に選択肢が広がったことで作業の簡素化にも貢献。サービス利用料は送料込みで1000円で、「儲けにはならなかった」が、購入客からの反響がSNSで多数上がりフォロワーが1000人以上増えたことで「想定以上の宣伝効果があった」と喜ぶ。「NGワードで一番多かったのがホラー系で、次が意外にも恋愛系。また他にも敢えて普段読む作家や作品を指定してきた方もいた」(戸井律郎店長)
大吉堂 戸井律郎 店長
第494号(2020/8/25発行)17面