~遺品ダイアリー~
思い手に寄りそって Story12
配偶者が亡くなったのを契機に住み慣れた家を片付け、老人ホームに入居する高齢者が増えています。今回はそんな男性の現場から生まれたストーリーをお届けします。
現場はお客である元建築家が設計した海一望の邸宅だった
亡き妻との思い出整理し
設計した家と決別した建築家
どんなに仲の良い夫婦でも、同時に昇天するのは難しい。昨今は配偶者の死を契機に自宅を処分し、老人ホームに入居する高齢者が増えている。今年初旬、家の片付けや遺品整理を手掛けるKRC(神奈川県横浜市)に持ち込まれたのも、そんな案件だった。
依頼者は80歳位の男性の娘で、母親が亡くなり、父親が老人ホームに入ることになったので、戸建の1階を片付けて欲しいということだった。最初に老人ホームに紹介された業者に依頼したが、見積も出さず、2階だけで90万円近く請求され、更に追加料金が発生すると言われ、知人の紹介でKRCに依頼することにしたのだ。
家を手放すことを心が納得できない
現場は湘南にある立派な邸宅だった。築40年近いというが、綺麗で塵ひとつなく、築10年位にしか見えなかった。だが、その家の主である高齢の男性はぶっきらぼうで口もきいてくれず、渡辺代表を困惑させた。「その方は建築家で、ご自宅は自ら設計した思い入れのある家でした。老人ホームに行くのがベストだと理屈ではわかっていても、自宅を手放すことに心が納得されていなかったのです」と渡辺代表。
第494号(2020/8/25発行)19面