好調の輸入古着に円安の試練

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好調の輸入古着に円安の試練

2022年07月20日

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昨今の円安の影響で値上げが相次ぐ中、古着にも大きく影響が出始めている。海外から仕入れ、主に国内の小売店を運営する古着店などに商品を販売する卸企業では、昨年対比で調達コストが3割ほど高騰しているという。卸企業でコストアップ分を吸収することが容易でない状況から、小売店の販売価格にも影響が及びそうだ。

3割上昇したコスト負担の行方

輸入古着卸・小売店企業の対応
企業名 屋号 事業内容 対応策
山久商会 山久商会 古着卸 平均200円上げる
(1商品辺り)
SSY ラッシュアウト 古着卸、小売店 価格変動なし
仕入量増加と人件費削減で対応
ディスマン ディスマン 小売販売 価格変動なし
仕入量増加で商品バリューアップ販売点数強化で売上拡大
THE MOTEL THE MOTEL 小売販売 価格変動なし
ピック数は変更せず精度を上げて販売ロスを減らす

山久商会の輸入古着山久商会の輸入古着

3つの高騰要因

3割も仕入れコストが上昇した要因は大きく3つある。まず1つ目は、円安の影響だ。古着問わず海外から商品を仕入れる場合、ドル建での購入のため影響を受けている。1ドルが135円台となるのは、24年前の1998年以来と多くの古着輸入事業者は、「少しずつ価格は上昇していたが、3割増加は異常値。これまで経験したことがないほどのコスト増で苦しい状況」と口を揃える。

2つ目は、古着ブームに伴う古着需要の増加にある。若年層を中心に古着を購入する消費者が増えたこと。コロナ禍で海外買付けが難しく仕入れが抑制される中、需要が増えていることが価格上昇に繋がっている。また、法人や個人問わず、コロナ下で人気が高まった古着事業を始めるケースが増え、競合他社が増加したことが影響している。

3つ目は、原料価格の高騰だ。ロシアのウクライナ侵攻による情勢悪化で燃料が高騰。輸送費の値上がりが起こっている。また、「アメリカだと古着を運搬するトレーラーの運転手は年収1000万程になっている」と福生市で古着卸販売を行う山久商会(東京都福生市)の山下公一代表は話す。通勤時のガソリン代など含め運送費だけでなく、原料高騰で人件費も値上がりして仕入れコストに影響が出ているようだ。

上昇額は約300円

仕入れコストの高騰に伴い、古着卸企業では値上げによる対応を余儀なくされている。山久商会では、アイテムにより異なるが、平均して200円ほど価格を上げている。他の卸企業でも同様で300円ほどの価格上昇が見られる。

そんな中で、卸価格を維持する企業もある。SSY(岡山県岡山市)では仕入れ量を増やすことで、1点当りの単価減と輸送回数を減らして価格を調整。また、卸販売を行う際は入りと会計時以外は基本的に無人でカメラ管理。人件費を抑えて運営することで価格の据え置きに繋げている。

そのほか、価格変動以外での施策として山久商会では自社で小売店の運営も検討している。SSYはすでに小売を行っているが、物量増加に伴い店舗数拡大に注力するなど卸企業が小売り強化をする動きも起こっている。

価格高騰は卸企業だけではなく、小売店にも影響を及ぼしている。ただ、今のところ価格の変更を行わず別の方法で対応しているケースが多いようだ。

小売店は価格変えず

アメリカンヴィンテージを中心に古着を扱うディスマン(新潟県新潟市)の大野寛太代表は「全体の売上を伸ばしていくことで、収益をカバーしていく考え」と話す。

1人当たりの購入点数と客単価を上げて売上の拡大を行い対応している。そのため、これまでより仕入量を増やして商品のバリエーションを拡大。セット販売に注力することで、平均1~2着から3~4着まで伸ばせている。

古着とアップサイクルした服を販売するTHE MOTEL(東京都世田谷区)では、仕入量は変えず、より厳選したピックで販売してロスを減らす考えだ。「例えば90sのUSAーTシャツなど、幅を広げるより良いものだけを取り揃えていきたいです。利益だけを考えているわけではないので価格は変えないようにしています」と岸正晃代表は話す。

3割もの大きな上昇は一時的なものと見られるが、今後も続いていきそうだ。アメリカなどで人手不足が相次ぎ、人件費の高騰が続くとされており、為替以外の要因も指摘されている。

古着需要の高まりは追い風ではあるが、卸企業から仕入れする小売店は価格以外の価値をこれまでより求められることになりそうだ。

第539号(2022/7/10発行)28面

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