スタジオユリグラフ、帯に書いた思い出も交換
2023年01月30日
記事制作およびメディア運用を手掛けるスタジオユリグラフ(沖縄県名護市)は「思い出書店」と題して本にまつわる思い出を帯に記したうえで、古本を交換し合う取組みを昨年から展開している。独自で専用アプリも作成し、交換の履歴なども確認できるように。今後はこの仕組みを集客装置として月額で様々な施設へと展開し、拡大を目指す。
店舗・空間の集客装置に
古本を寄付・交換
オリジナルの帯に書き込む
思い出書店は沖縄の「ココノバ」と呼ばれるコミュニティスペース内に昨夏設置され、小さな一角にもかかわらず約50名が利用し、蔵書数は130冊近くある。仕組みとしては利用者にはまず古本を持参してもらう。それから同社が用意したオリジナルの帯にその本にまつわる思い出を自由に綴ってもらい、寄付・交換を行うというもの。つまり古本のやり取りには金銭が発生しないため、気兼ねなく顧客に利用を勧められるのが施設側の大きなメリットだ。「本を介して利用者同士が繋がることで、導入店舗側のコミュニティ形成に貢献できる」と森石豊代表。また無料の独自アプリを使えば、自身が寄付した古本のその後の交換履歴がラインで通知されるようになっており、思い出が人に渡っていくさまをリアルタイムで追うことができる。加えて履歴上ではコメントの投稿・閲覧も可能で、実際にどういう感想を持たれたのかも可視化できるなど、オンラインとオフラインの両面から利用者に訴求している。現状の導入店は沖縄県内のみだが、公式インスタグラムのフォロワーは3000人を超えており、注目度は高い。この仕組みを他の施設や店舗にも提案し、利用料を得ていきたい考え。さらには取組みの社会的意義を通して自社の認知度を上げる狙いもありそうだ。
価値の原体験
当初、森石代表は個人で古本のフリマなどを開催。自身で出品した本のため、それにまつわる思い出を語りながら販売したところ、販売価格に1000円も2000円も上乗せして購入する客層と遭遇。思い出が付加価値を生むという原体験を得た。一方で個人で思い出を語り続ければ遅かれ早かれネタが枯渇すると気づき、語り手を自身ではなく顧客にゆだねることに。それが思い出書店の出発点だった。
第552号(2023/01/25発行)19面