繁盛店の店づくり vol.216
平日は近くのオフィスで働く人が打ち合わせに利用することが多い同店。休日は奥渋谷エリアのオシャレな雑貨店などを巡る、若い女性客が増える
渋谷駅前のスクランブル交差点を抜け10分ほど歩いたところにある「BAG ONE」。ラム酒100種類を常備する本格的なカフェバーでもありつつ、一般的な書店ではあまり見られない個性的な選書のセンスも光る店だ。
運営する出版社のトゥーヴァージンズ取締役でプロジェクトマネージャーの神永泰宏さんは「出版不況の中、書店で販促をするだけでは本は売れません。複合的な新しいことに挑戦しようと、出版を軸にした飲食店事業を始めることにしました」と話す。
取り扱うジャンルはビート文学、カウンターカルチャーを軸に、同社が出版のテーマとしている「旅」「アウトドア」「犬(動物)」「本」に関係するもの。さらに派生して料理や建築、絵本なども置いている。「人生を豊かにする本」が大きなコンセプトになっている。
店内の様子。右の本棚には、この店のメインとなる1960〜70年代の「ビート文学」や「カウンターカルチャー」の本が集約されている
新刊7割、古書3割で、店頭在庫は約2000冊。古書は希少価値のある本も多く、1冊あたりの単価は2000〜3000円ほど。本の価値が分かるお客に支持され、売上全体としてはカフェの比率が高いが、「ブックカフェの業態としては、本の売上は高い方だと思います」と神永さん。
本棚には新刊・古書が一緒に並べられている。ビート文学の代表的作家ジャック・ケルアックの「路上」は、国内の初版本、巻物状の草稿を翻訳した「スクロール版」、新書の文庫が並ぶ。「僕らなりの切り口で、この本の隣には、この本と、連想ができるように並べています」と神永さん
古書の仕入れはスタッフが古書店を回って購入。今後は特定の作家の作品などに絞り、店頭買取もしていく予定だ。
「今後は2店舗、3店舗目をオープンさせたいと考えています。本はその土地柄や集まる人の趣味嗜好に合わせてセレクトできるのが武器。京都だったら、この店舗とは全然違うセレクトになると思います。海外にも出店できたらいいですね」と神永さんは話している。
入り口には店の紹介をするテイクフリーの冊子を置いている。メニューにもなっていて、とてもオシャレ
店内はFree Wi-Fiで、それぞれの席にコンセントも付いている
1階の奥にはテーブル席とカウンター席、キッチンがある
1階の窓側にもテラス席があり、建築やデザインに関する書籍も並ぶ
2階へは螺旋階段を使って上がる
階段の周辺にも本棚があり、書店としても見応えがある
2階に併設されているギャラリー。2階では月に10〜20本イベントを開催している。
2階は極力装飾はせず、その時その時のギャラリーのテーマに合わせて、自由にテイストが変えられるようにしている。また、店内の家具のほとんどはアメリカのヴィンテージ家具とオリジナルプロダクトの「ACME Furniture」のもの。以前、同社のアーカイブブックをトゥーヴァージンズが出版したのがきっかけ
オープン | 2019年10月19日 |
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取扱い商品 | 書籍全般(新刊:古書=7:3) |
備考 | 店舗面積/約60坪(1、2階合わせて) |
第484号(2020/3/25発行)12面