西洋アンティーク家具修復の個人工房
2018年03月30日
仕事ができる人の1日 沖縄から北海道までネットで修理受注
西洋アンティーク家具の修復工房「佳秋の工房」(東京都葛飾区)。お客に丁寧に修理工程を報告し、確認しながら作業を進める姿勢が高い信頼を得ている。
▲昨年12月に移転した佳秋の工房の外観
スコットランドで家具の修復について学び、岸佳秋さんが帰国したのは1996年。工房を構えた当初は、アンティーク家具のディーラーの下請けが多かったが、徐々に個人客から依頼を受けるようシフトさせていった。現在ほとんどがインターネットからの個人客だ。「当時は不況で、ディーラーが倒産すると共倒れになる危険がありました。それで直接の 注文を増やすようにしたのです」と岸さん。
▲佳秋の工房 岸佳秋さん
美術品と額縁を扱う仕事に12年間従事。ヨーロッパ旅行中に出会ったア ンティーク家具の美しさに打たれ、その後スコットランドのThe Myre side International School of Furniture(現The Chippendale international School of Furniture) で家具の修復技術を学ぶ。帰国後、1996年に墨田区亀沢に工房を開設。2017年に現在の葛飾区青戸に新工房を移転する。文化財保存修復学会会員。
HPを作り、ネット上に様々な修復例を載せた。それが修復先を探していたお客の目に止まり、今では全国から依頼が来る。
他にも工房から30㎞圏内は集配無料にするなどのサービスで、お客の信頼を得ている。
工房の一部は店舗になっており、買い取った家具も販売している。今後は販売専用の店舗の出店も構想中。工房では木工教室も開いているが、額縁作りや家具のギルディング(金箔張り)の教室も開いてみたいと岸さんは考えている。
父の玄能、外国の修理道具を愛用
▲設計士で工務店を経営していた父親が愛用していた玄能。岸さんは毎日使っている
▲スコットランドで学生だった頃に購入した中古の修復道具。左は長台鉋。以前使っていた職人が付けた模様がそのまま残っている。 右はノコギリ。どちらも日本の道具と違い、押して切る(削る)刃になっている
岸さんが大切にしている仕事のポイント
1)1過程ごとに依頼主に連絡
作業が1過程進むごとに、写真を添付してメールで依頼主に報告。どういった資材を使い、どのように修復するか確認を取ってから作業を進めている。メール数は、椅子の脚の修復だと数十回ほど。手間はかかるが、クレームはほとんどない。
2)2〜3つの作業を並行
加工しすぎないために2〜3つの作業を並行して行う。「その方が時間の割り振りがうまくでき、やりすぎを防げます」と岸さん。厚化粧と一 緒で、家具も修復しすぎると、オリジナルの良さを損なってしまう。並行して作業するこで、集中しすぎず程よいところで仕上げることができる。
▲岸さんが特に好きな伝記は夭折したカーレーサー・浮谷東次郎氏に関する物。彼が中学の時に執筆した「がむしゃら1500キロ」を小学生の時に読み、パワー溢れる行動力に感動した。
第436号(2018/03/25発行)8面