《バイヤー道~私の買取接客術~》倉科輝男社長「楽器を〝診る〟力で買取成約が9割超え」
2018年06月19日
バイヤー道
~私の買取接客術~
fivestar
倉科輝男社長
「東京楽器」の屋号で実店舗を1店運営し、中古ギターを中心に楽器の買取・販売、修理を行うfivestar(東京都品川区)の倉科輝男社長。
楽器を〝診る〟力で買取成約は9割超え。
かつて盗難品を買い取ってしまった経験から、お客との会話には1時間半かけることも。
共感を呼ぶトークも交え、リピート客獲得に努めている。
〝楽器の医者〟ギター買取成約9割
「楽器の医者みたいなものです」(倉科社長)。
倉科社長は楽器を〝診る〞ことと、会話に時間をかけることで、買取成約率は9割超を誇る。
買取件数は月10~20件。
ギター1本の買取りでも、お客と1時間半話し込むことがある。
「楽器は生き物。特にギターは木製なので乾燥や湿気に影響を受けやすい」(倉科社長)。
例えばギターなら、保管や手入れの仕方によって、フィンガーボードの収縮やネックの反りなどが起こる。
細部に渡る不具合1つ1つを〝診断〞していく。
倉科社長がお客に買取額を提示する際、取り入れているのは〝減点法〞だ。
まずは買取相場を提示。その後、修理が必要な箇所を部分ごとに確認し、「××に修理が必要だからマイナス○円」と伝える。お客が納得できる説明に努める。
「楽器の専門店でない所では、外見でしか査定額を出せないことがある。理由も分からず、期待より安い査定額ならば、お客様が納得できません」(倉科社長)。
▲売場8坪にギター40本以上。フェンダーやギブソンなど、中心単価は30万~40万円
持ち主の本人確認徹底
創業1年目に、盗難品と気づかずサックスを買い取ってしまったことがあった。
結果70万円の損害。風評被害も受けた。以降、お客との会話に時間を割くようになった。
査定時には、購入した時期や場所、部品の交換頻度など、持ち主が本人かどうかを根掘り葉掘り聞く。
「直接、『これは自分のですか?』と聞くこともあります。多少気分を害されることがあっても、こちらが被害を受けてはだめですから」(倉科社長)。
「家庭と趣味」 両立の難しさを共感
さらにトークで大切なのは、次の利用にも繋げることだ。
そこには〝共感〞が必要だと語る。
同店の利用者は20~60代と幅広い。
例えば買取りに出す理由が、「奥さんに色々と言われて...」と、渋々手放すような男性客であれば、自分の経験談を話していく。
実際に倉科社長が所有したギターは通算100本以上。
倉科社長も妻子持ちで、家庭と趣味の両立の難しさをお客と共感しあうことがある。
「話し込んでしまうのは、とにかく音楽が好きだからでもあります。今後も楽器の橋渡し役として、1人1人のお客様との関係を深めていきたい」(倉科社長)。
第441号(2018/06/10発行)9面