《明日のリユースを創る!》未経験の顧客にリユースの魅力伝える
2019年05月19日
明日のリユースを創る!
実践マーケティング講座
~第8回「リユース企業、5つの方向性」~
これまでリユース業界の3つの時流と5つの方向性をお伝えしてきました。まとめると、
① 粗利率・回転率をコントロールするには、人とシステムで!
② 1億総商人時代には、プロしかできない仕事を!
③ 自分で査定する時代は、買取の情報格差がなくなる!→販売力に差がつく。(顧客の質と数・モノ売りからコト売りへ)
となります。
特に、既存の中古品市場は約2兆円と言われていますが、不用品の潜在市場は7兆〜37兆円あるとも言われています。〈図1〉
現状の市場の状況を見ると、この2兆円の中でのシェア争いや差別化に終始してしまっていると感じるのです。ある調査によると、日本では全人口のほぼ60%がリユースショップを利用しないそうです。ではなぜ利用しないのでしょうか?
私の仮説は「人間は自己実現に向けて絶えず成長する」と仮定して、欲求を階層化したアメリカの心理学者・マズローの5段階欲求説で説明できると考えています。モノのマーケット(物質的欲求)は既存の2兆円・利用率40%で、コトのマーケット(精神的欲求)が未経験マーケットの60%ではないかと考えています。〈図2〉
言い換えると、社会的欲求(つながり・共感)や承認欲求(わかってくれている)、自己実現欲求(〇〇してあげたい。)をリユース企業が満たせないがために、60%の人々が利用しないのです。逆に言えば、この精神的欲求を満たしてくれるお店やサービスを顧客は望んでいるのです。価格や品揃えばかりに目がいってしまい、顧客の本当の欲求が見えていない状況なのではないでしょうか。
この60%の未経験顧客の開拓ができているリユース企業は業績が良いと思います。未経験の顧客にリユースがあるライフスタイルの魅力を伝え、日本に眠るストックマーケットを掘り起こすのがリユースショップの大きな役割です。日本では、人口減、超高齢化社会、などの社会問題も数多くありますが、リユース企業に課せられた使命は、こうしたストックマーケットを流動化させ、モノとお金を動かし、経済を回していくことではないでしょうか?ぜひ皆様の今後の方向性の参考にして頂ければ幸いです。
福本 晃
元船井総研上席コンサルタント。2000年に、リユース業界向けコンサルティング部門を立ち上げ、全国各地に600店舗のクライアントを持つ部門に育てる。リユース業界のエキスパートとして、株式上場企業など数多くの急成長企業を作り出してきた。2017年3月にコンサルティング会社「A−DOS」を設立する。
現在、「企業の"あり方"と"やり方"をつなげて、"理念"を"利益"に変える」をモットーにコンサルティングを行っている。リユース業界向けには、TRCコンサルティングを立ち上げ、リユース企業への幅広い支援を行っている。
著書に「はじめよう!リサイクルショップ中古品マーケティングの真髄」。
第463号(2019/05/10発行)13面