明治から昭和の戦前まで、SP盤は最先端の音楽メディアとして君臨していました。2020年のNHKの朝ドラ「エール」でも大正~昭和初期にかけて色んなシーンでSP盤が新曲発表の際の「新譜」として使われていました。現存するSPは経年劣化して紙スリーブも焼けてボロボロのものが多いですが、ドラマの中では新譜として扱われていて「昔はこれも新品だったんだよな・・・」としみじみ思いました(笑)。
SP盤は歴史的価値あるレア物の宝庫
SP盤はシェラックという天然素材でできており、その多くは約70―80年以上経過しています。経年劣化も激しく、非常にモロく割れやすくなっており、落としただけで割れます。そして、天然素材ゆえにカビも多いです。当然、運送中の破損がよくあり、運送業者は保証の対象外とする場合が多いようです。言うまでもなくSP盤は年々数が少なくなっています。今では国会図書館にも収蔵されていないような、歴史的な価値があるものもかなり多いと思われます。
そのため、現代でも人気のある、例えばアメリカですとブルースの超名曲「Robert Johnson / CROSS ROAD BLUES」などは状態により100万円以上で取引されています。特にブルースのアメリカの原盤は高額なものが多いです。日本では岸一敏「忠犬ハチ公(リアルなハチ公の鳴き声入り)」や、明治後期の落語、中でも外国人初の落語家の初代快楽亭ブラック、5代目古今亭志ん生など人気のある落語家や、戦前の朝鮮の歌手のもの、満州国で作られたものなどは高額になる場合が多いようです。変わり種ですと、おせんべいで作られた缶入りのレコード「かつら春団治/ものいふせんべい」は缶だけでも相当に高額で、もちろん中身が現存していたら大変なことだと思います(笑)
第516号(2021/7/25発行)19面