《トップINTER VIEW》クラス 久保裕丈社長、利用者1000人の家具サブスクを運営
2019年07月17日
・大手からベンチャーまでの企業、一般消費者1000人が利用
・課題は「物流」今後は内製化も視野に
・資金調達で個人ユーザのコーディネート提案に注力する
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クラス
デザインに込めるのは、一人暮らしの課題は何か?
家具を中心としたサブスクリプションサービスとして、昨年8月に産声を上げた「CLAS」。同サービスを手掛けるクラス(東京都目黒区)では、自社で製品を企画・生産するなど、競合と一線を画している。営業部署を持たずに、個人の口コミや法人からの引き合いで取引の数を集めている。久保裕丈社長にCLASへの思いや今後の展開を聞いた。
--CLASは主にどんな方々に利用されている。
久保 CLASは家具や家電のサブスクリプションサービスで、噛み砕いて言えばレンタル。現在個人と法人の両方に提供しています。個人の場合は1都3県を対象に、メインユーザーは30歳前後で、単身やディンクスといった1〜2人暮らしの方。現在利用者は1000人を超えました。
--法人利用の方は。
久保 ベンチャーとか小規模の企業の利用も多いですが、年商100億〜200億円規模の企業も利用していただいている。また自社のオフィス家具に使うのとは別に、ホームステージングの用途もあり、超大手企業も導入してくださっています。法人利用合わせると、これまで100社近くとお話してきました。
CLASとしての売上は今、法人向けの方がやや大きいという状況です。
--ここまでの広がりを見せた背景には。
久保 当社、営業の部署ってないんですよ。やはり新しいカルチャーを作っていくタイプの商売なので、ガツガツ営業をかけるということはなく、口コミや引き合いで展開してこられたのではないのかと思っています。
大手家具の量販店さんで、家具の下取りやリペアに注力する動きが見受けられます。それってトータル的に良いことだと思っています。業界的に従来の使い捨てだった時代から、徐々にリユースの方向に意識が振れ、消費者の抵抗もどんどん無くなっていることは、当社にとっても追い風なんです。
--CLASは、御自身が強烈に欲しいサービスだったから、作ったと聞いています。
久保 そこなんですよ!個人的にもそうでしたし、ずっとベンチャー経営の経験が長かったものですから。家の引越しやオフィス移転の度に、家具を運んだり、捨てたり、新しいものを買ってはまた捨てたり。都度コストも掛かるし環境にも悪い。いい加減家具買うのをやめたかった...という原体験から来ています。
リペア前提に自社生産
10年保つ家具作る
--個人の方は主にどのように使っていますか。
久保 CLASがメインターゲットとしているのが、短期利用ではなく日常使いしたい人たちです。実際のユーザーは月々6000〜7000円程度で、2〜3点を借りているケースが多い。例えばベッドとベッドマットの組み合わせとか、ソファーやダイニングなども人気があります。一度に新品を買ってしまったら30万円弱はするでしょう。CLASは1年から1年半くらい使って欲しいなという価格を設定しています。
--競合サービスとの違いは。
久保 当社がメーカーから商品を仕入れることもありますが、いわゆるDtoCと呼ばれる業態もとっているんです。自社で家具の企画と生産をしていて、中国とベトナムに生産拠点を持っています。また貸し出した物が返却されたら、角潰れや表面潰れにも、国内で新品同様にまでリペアを施す。
そもそも、リペアすることを前提に、もの作りしている部分も強みなんです。基本的に家具1点10年は持つように設計する。短くても5年。正直オリジナル品なら、他のレンタル会社みたいにメーカー仕入れするよりも、原価ベースで低いですから。
--CLASの家具ってどんなテイストでしょう。
久保 素材で言うと、オークやウォルナット、当然無垢材も使いますし、全体的にはベーシックです。CLASで提供する家具のデザインそれ自体には癖が強くなくていいと思っていて。
デザインに込めている思いは、例えば一人暮らしの人にとって家具の課題は何だろう?とか、物流会社にとっての課題は何だろう?とか。もちろんある程度の耐久年数を実現しなきゃいけないのは当然ですが、ただいたずらに良い素材を使うっていう発想は、僕はしない。とにかく、お客様におトクに使い続けてもらえるサービスを目指している。なので、当社が利益を取れるようになるのは大分先でいいとも思っているんです。
--現状課題があるとすれば。
久保 やはりまだ物流の面。商品が当社の国内の倉庫を出てから、ユーザーに届くまでのラストワンマイルの部分をもう少し作り込まないといけない。今は提携の配送業者を使わせていただいており、当然今後はそこの内製化を考えています。
旧型家具や不要家具、「買い取って欲しい」
--リユース企業との連携などは。
久保 それこそ幾つかのリユース企業さまとお話はしていますね!例えばCLASで何度かレンタルに回した物を買い取っていただくとか、当社でも商品の納品と同時に、ユーザーから不要になった家具などを引き取ることもあるので、それの買い取りですとか。
当社では今、もの作りをどんどんブラッシュアップしているところなんです。本当細かいですが、例えば天板の厚みやら何やら徐々に見直しをしていて。すると新しい型に刷新した時に、古い物はできるだけ貸し出ししない方がいいのではないのかと。そういうタイミングで、リユース企業さんにお願いするシーンが今後出てくると思います。
2020年までには、自社ブランドで300種類の家具を提供できるまでに持っていきたい。
--最近もVCから資金調達されるなどありました。ズバリ直近でCLASのどこを強化していくのか。
久保 個人に対しても適宜正しい提案ができるようなサービスの構築ですね。法人に対してはコーディネートの部分も既にやっているんですが、今後は個人向けにも。
例えばアンケートを通じて、お客様の状態とか思考といった情報をきちんと把握していく。現状は当社のカスタマーセンターからアフターフォローの連絡をするなどやっていますが、人の手を介してやる部分に加え、自動的に収集できるフォームづくりは今すぐにでも進めていきたい。
--確かにサブスクリプションサービスに特有の、顧客との関係性構築は常に大事です。
久保 ええ。やはり本当に良い提案って、お客様の今欲しい物に加え、少し未来に欲するだろうなというものを察知し、適度なタイミングで提案できることだと思っています。例えば家族構成を見て、お子様がいればベビー用品を提案してみるとか。一歩先のデータをどう集めるかというところはまだ解決しきれていないですが、ゆくゆくは消費財以外のアイテムなら、CLASを使って総合的に揃えられるサービスを目指していきます。
●会社データ
社 名 株式会社クラス
代表取締役社長 久保 裕丈
所 在 地 東京都目黒区青葉台4-6-6青葉台スタジオ2F
●社長プロフィール
久保裕丈(くぼ・ひろたけ)。2005年3月東京大学工学部卒業。2007年3月東京大学新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年4月米系のコンサルティング会社A.T.Kearneyに入社。商社・メーカー・金融機関等への全社戦略策定や企業買収を手がける。2012年、女性向け通販サイトMUSE&Co.を設立し2015年に売却。その後、個人で数十社の企業顧問を勤める。2017年アメリカで大人気の恋愛リアリティーショー"TheBachelor"の日本版"バチェラー・ジャパン"のシーズン1の主役に抜擢される。
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第467号(2019/07/10発行)9面